聖皇女コーネリア
□第3章
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世界三大国の一つ、アリストレア皇国も同様である。
同じく三大国であるアンドヴァリ王国は、神聖教が広まる以前から祀っていた神守護竜ヴァーリによって、魔の軍勢から守られていた。
そして三大国最後の一つ、ビフレスト公国は古代文明の遺産――防衛機構――によって、魔軍を退け続けていたのだ。
未だ抵抗を続ける国家もあるがそれらは三大国に比べ、国防面で劣ってしまう。
いずれ魔の王の支配下に収められるのも、時間の問題だった。
「……しかし、アリストレアの小娘があの女から力を授かれば、我らの野望にとって大きな脅威となるに違いない」
小娘とはコーネリアを、あの女は女神エスポワールを指すのだろう。
「今はまだ未熟で無力な小娘にしか過ぎん。だが、いずれ聖皇女として覚醒してしまえば、非常に厄介な存在となる。だから……分かるな?」
四天王は主の言葉に対し、恭しく跪いた。
王が問わんとしている事は、皆まで言われずとも把握しているのだろう。
「魔の王様のご意志のままに……。アリストレアの皇女が力を得る前に捕獲し、覚醒を阻止してみせましょう」
リーダー格であろう青い髪をした美しい男が、代表して答える。
見た目は二十代後半といったところだが、彼ら魔者の寿命は人間のそれと異なっている。
実際はかなり年を取っているに違いない。
それでも魔者の中では、いわゆる“若手”に当たるのだろうが――。
忠実なるしもべの言葉に、王は鷹揚に頷いた。
臣下達を下がらせた後、魔の王は心の中で呟く。
――それにしてもあの娘。髪の色こそ違うが、やはり似ているな。“あやつ”に……。
まるで遠い昔に思いを馳せるかのように、彼はそっと瞳を閉じる――。
魔の王がコーネリアの話をしていた時から、遡ること数時間。
旅の装いに身を包んだ皇女は謁見の間にて、両親と兄に出立の挨拶をしていた。
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