聖皇女コーネリア
□第2章
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「あ〜あ。ひめさまのお話、ききたかったのになあ」
優しくて綺麗で、いつも素敵な話を聞かせてくれるコーネリアが、みんなは大好きなのだ。
だからこそ、会えないのが辛いのだろう。
一国の皇女としての教養やら、試練の旅を切り抜ける為の鍛練やら、コーネリアが学ばなければならない事は沢山ある。
それでも彼女は僅かな合間を見つけて、宮殿をこっそり抜け出していた。
よっぽど、子供達の事が好きなのだろう。
たまに来ない日もあったが、二日連続で来ないのは今まで無かった。
それ故、いらぬ心配が鎌首をもたげてしまう。
ここでぼうっとしていても仕方がないので、今日も自分達だけで遊ぼうとしたその時。
「おーい! みんな、大変だぞー!」
酷く慌てた様子で、一人の男の子が駆けて来た。ここまで一気に走ってきたのか、ゼエゼエと荒く息をついている。
「何だ、トーマじゃないか。どうしたんだよ?」
トーマと呼ばれた少年は深呼吸した後、震えるような声で言った。
「ひめさまが……ひめさまが明日、旅立つそうなんだ……!」
予想外の言葉に子供達は息を呑む。
「嘘でしょ……!?」
「な、なんでトーマがそんな事知ってるんだよ?」
自分達と同じごく普通の平民である彼が、どうやってその情報を得たのか疑問に思ったのだろう。
子供達の中でリーダー格っぽい男の子が、いぶかしげに尋ねた。
「ついさっき広場にへいかからのおふれがはりだされたんだよ。オレはそれを見た母ちゃんから話を聞いて、それで……」
みんなに伝えなくてはと、慌てて飛んできたという事か。
大人達と同様に彼ら子供達だって、魔の王が封印され世界が平和になるのを望んでいる。
だが、コーネリアと遊べなくなってしまうのを、とても残念に思うのも確かだ。
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