聖皇女コーネリア

□序章
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――それは昔々のお話です。

平和なこの世界に突如、魔の王という恐ろしい存在が現れました。
彼は私達人間族が暮らすこの世界と隣り合った闇の世界、ティルワンの支配者でした。

魔の王は魔者と呼ばれる闇の世界の住人達や、醜い魔物達を従えていました。
それらの者達は総称して、闇の眷属と呼ばれています。

闇の眷属達はこの世界のあちこちで、街や村を破壊し多くの罪なき民の命を奪いました。
平和で穏やかな時の流れていたこの世界は地獄絵図と化し、人々は恐怖と絶望に支配されてしまったのです。

しかし、人々が恐怖と絶望に震える日々が終わりを迎える時が、ついに訪れました。
その現状を嘆いた、一人の娘が立ち上がったのです。
娘の名はミリアリア・ルナ・エーベルハイト。
アリストレア皇国の第一皇女でした。

ミリアリア皇女は自国が崇める光の女神エスポワールに、どうすれば世界が救われるのか教えを請うたのです。
世界を、人々を救いたいと願う心優しき少女に、女神はこう命じました。

『優しき人の子よ、貴女のその心を称えて、魔を討ち滅ぼす聖なる力を授けましょう。しかし、それを授けるには試練を達成しなければなりません』

女神は皇女に幾つかの試練を与え、旅立たせようとします。
しかし、両親である皇帝夫妻は、大切な娘が危険な外に出かける事に、最初は猛反対しておりました。
けれども、どうしても世界を救いたいという娘の強い決意に折れ、二人の護衛を付けました。

一人はエスポワール教の神官を務める、皇女の従姉マリアンナ・ティアリス。
十九歳という若さでありながら、優れた治癒魔術の使い手でもありました。

もう一人の名はシオン・ロートフィールド。
皇国騎士団に所属している、二十歳の青年でした。
彼は若くして皇国騎士団の中隊を任せられた、非常に優れた剣の使い手なのです。

二人の護衛を引き連れたミリアリア皇女は、両親と臣下達そして皇都の民達に見送られながら、皇都アリストテレシアを旅立ちました。


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