聖皇女コーネリア

□第14章
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コーネリアと共に戻ってきたミラネを見るなり、ルキオラが慌ただしく駆け寄って来る。
エディことエディアルド王子より預かった書状を手渡し、彼から聞いた話をかいつまんで伝えた。

「ミラネ様、アンドヴァリ王国の守護竜ヴァーリが原因不明の病にかかったとの事です」

「なんじゃとっ?!」

告げられた内容に、ミラネは驚愕してしまう。
横で聞いていたコーネリアも思わず、口を手で覆ってしまっている。

守護竜ヴァーリといえば、アンドヴァリ王国防衛の要。
その名が示す通り、猛々しいドラゴンの姿をした守り神である。

ミリアリアが活躍した時代、すなわち千年前から王国を護るようになったという。
当時も彼のおかげで、深刻な被害を受けずに済んだという言い伝えが残っている。

当然、今の時代でもヴァーリの存在があるからこそ、闇の眷属の侵略を受けずに済んでいた。

守護竜が護るのは王都とその周辺のみと限定された範囲の為、地方などでは魔物の被害を受ける村がないわけではない。
しかし、ヴァーリが守護する国というのはかなり大きな牽制になるようで、大規模な侵略は起こっていなかった。

自分達の安全を守ってくれる彼を、アンドヴァリの民は神のように敬い、崇めているのだ。
いわば、守護竜ヴァーリは王国の土着神のようなものといえよう。

アンドヴァリ人は守護竜信仰と並行して、神聖教を信仰しているのだ。

「守護竜にもしもの事があれば、アンドヴァリも無事では済まないかもしれぬ……」

渡された国王からの親書へ目を通しながら、ミラネは深刻そうに呟く。

そう、かの国が安全でいられたのは、守護竜の存在があってこそ。
彼に万一の事があれば、他国同様に制圧される危険性があった。

「守護竜っていわば、エディんとこの神様だよな? 神様にも病気ってあるのか?」

“神”とはまさしく、超常的な存在。
そこらの人間みたく病気にかかるはずがないと、ディオンは思っていた。

だが正確に言えば、ヴァーリは神族ではない。
このユニヴェールに残る“神”は、エスポワールだけなのである。

かつて、この世界には数多くの神が存在していた。
しかし先史文明の滅亡以降、ぱったりと
姿を消してしまったのである。

神々がどのような存在だったのか。
何故、ユニヴェールからいなくなったのか。
そして、今はどこにいるのか。

これらは未だ解明されぬ、大きな謎となっている。

そもそも、神々に関する資料や記録は圧倒的に少ない。
伝承や神話の類すら、僅かにしか見つかっていないのだ。


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