聖皇女コーネリア

□第10章
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観葉植物の陰に隠れながらコーネリアは、あの三人組が移動するのを待っていた。
あの三人組とはアリストテレシアの南地区で彼女をさらおうとした、冒険者崩れの悪党達の事である。

聖地エイディン島行きのこの船に、どうして彼らが乗っているのかは不明だが……。

彼らはコーネリアの顔を覚えている可能性があるので、迂闊に出て行くわけにはいかない。
気付かれれば間違いなく、絡まれてしまうだろう。

話に夢中になっているみたいなので、その隙にこっそり通り抜けようと考えたが、万が一の事を思うとなかなか踏み出せない。
エディの為にもいつまでもこのような所で、グズグズしているわけにはいかないというのに……。

――さっきからなかなか動きませんわね……。

彼らはその場から移動する気配を微塵も見せなかった。
話に夢中になっているのだろう。

それにもしも三人組がこの場から動いたとしても、油断は出来ない。
コーネリアがいる方に移動してくる可能性があるからだ。
反対方向に行ってくれるのなら安心なのだが。

「……それにしても、あの時は惜しかったなぁ」

「いいところで邪魔がはいりましたからねぇ……」

悔しそうにボヤく親分格にフェイスが同調する。
“仕事”が失敗した時の話をしているのだろうか。

会話を盗み聞きしていたコーネリアは、その内容から嫌な予感を抱いてしまう。
もしかして、自分をさらおうとした時の事を話しているのではないか……と。

「あのコなかなかの上玉だったから、きっといい値で売れただろうにね。はぁ、思い出す度に悔しくなっちゃうわ〜」

「ま、いつまでも未練を引きずってちゃいけねぇ。別の獲物を探すとしようじゃねえか」

聞き捨てらならないその言葉に、思わず眉を顰める。
まさか、彼らは巡礼船の中で女性を拐かすつもりなのだろうか。
船内には治安維持の為に、聖騎士が交代で常駐しているというのに……。

あるいは船の中ではまだ手を出さず、ササンに戻ってから事を起こす腹積もりかもしれない。

――とにかく、聖騎士のどなたかにお知らせしなくては……。

具合の悪いエディを更に待たせてしまうのは忍びないが、誘拐の計画を見過ごすわけにはいかない。
コーネリアはそうっとその場から離れ、元来た方へと戻ろうとする。


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