聖皇女コーネリア

□第9章
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お金を貸して欲しい。
初対面でありながら、いきなりそんな不躾な頼みごとをしてきた美青年エディ。

あまりに非常識な内容に、コーネリア達は呆れてしまうのであった。

「おいおい……。そりゃないぜ〜。初めて会った相手から金を借りようなんて、ちょっとどうかと思うぜ?」

「……ですよね。ははっ、すみません。まあ、最初から駄目もとで頼んだんですけれど」

爽やかに笑うエディ。
どうやら断られてしまうであろう事は、始めから分かっていたようだ。

そもそも、彼はどうしてお金を借りたかったのだろうか。
その辺りの事情が気になったコーネリアは、エディに尋ねるのであった。

「エディさんはどうしてお金を借りたいのですか? もしかして、お金に困っている……とか?」

エディの身なりは一見、裕福そうである。
彼が身に付けている旅装も上から羽織っているマントも、華美なデザインではないが質の良い生地で仕立てられているようだ。

とてもお金に困っているようには見えないのだが……。

「コーネ、世の中には高価そうな服を着てても、家計は火の車……な連中がいるもんなんだよ」

まあ、そういう類の者も存在するにはするだろうが。

「コホン、言っておきますが私は、生まれてこのかたお金に困った経験はございませんよ」

コーネリアとディオンの脳内で“貧乏”認定されそうなのがよっぽど嫌なのか、爽やかな笑顔でエディが言う。
笑顔の裏にどす黒い感情を忍ばせながら。

「……す、すまねぇ」

「も、申し訳ありません」

思わず気圧されてしまい、謝罪する二人であった。

「まあ、いいでしょう。こんな事で怒る程、私は大人げなくはありませんから」

現に怒っていたくせに、何を言うのか……。

「先程の質問の答えですが、単刀直入に言いますと無くしてしまったんですよ。お金の入った袋を」

彼曰く、さっきの店で会計しようとしたところ、紛失した事に気付いたらしい。
危うく無銭飲食犯として突き出されそうになったが、持っていた装飾品で支払いを済ませその場をしのいだという。

「それは……災難でしたね」

「ええ、ええ! そりゃあ、もう災難でしたよ! この僕が衆人環視の中、無銭飲食の疑いをかけられるだなんて……」


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