聖皇女コーネリア
□第2章
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アリストレア皇国皇都アリストテレシアにある、一般市民達が暮らす住宅街。
そこに幾つか存在する公園の一つに、子供達が集まっていた。
コーネリアがお忍びで街に来た時に、いつも遊んでいる子達である。
さんさんと降り注ぐお日様の下で、無邪気にはしゃいでいるかと思われたが……。
どの子も皆一様に、退屈そうな顔をしていた。
「……はあ、今日もこないね」
一人の男の子が溜め息混じりにそう言うと、他の子達も口々に喋り出す。
「昨日もこなかったよなあ……」
「今日こそは来てくれると思ってたけれど……」
「どうしちゃったんだろ、ひめさま……」
彼らが沈んだ様子を見せているのは、大好きな“ひめさま”……コーネリアがここしばらく、姿を見せないからだった。
ほぼ毎日のようにやって来る彼女にしては、とても珍しい事である。
コーネリアが外出禁止令を言い渡されている事を、子供達は知らないのだ。
「きゅうでんで、なにかあったのかなあ?」
宮殿の方を見やりながら、女の子が心配そうに呟く。
平民の子供である彼らに、宮中の様子を知る術などない。
彼らの家族などの中には、業者として宮殿への出入りを許されている者や、兵士や侍女として勤めている者もいた。
だが、そういった者達は宮中で見聞きした事を、みだりに口外してはならない決まりがある。
もしもそれを破れば出入り業者の場合、最低一ヶ月間取引を停止させられてしまう。
兵士や侍女の場合は、最低一週間の謹慎及び減俸だ。
厳しいかもしれないが、これも市井の者達へ無闇な情報を与え、いたずらに混乱させないが為の措置である。
そんな厄介な決まりのせいで、宮殿内がどんな様子なのか……否、コーネリアがどうしているのか、みんなは知る事が出来ない。
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