聖皇女コーネリア 外伝

□にわか妃(仮)の受難
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アリストレア皇国皇太子エルンスト殿下のご婚約者、エーベルハイト宮入り決定――。

取り巻きの一人からその情報を入手したエリザベッタは、居ても立ってもいられなくなってしまった。
自分から皇太子を奪った泥棒猫がどんな女なのか、顔を拝んでやらなければ気が済まないのだろう。


エリザベッタ・サーシャ・タイラント。
世界三大国で最も広大な領土を持ち、最も栄華を極めた、まさに大国中の大国アリストレア。
その国の名門貴族タイラント侯爵家に生まれた彼女は、ある時まで有力な次期皇太子妃候補と見られていた。

本人も物心ついた頃から両親を含む周囲のオトナ達に吹き込まれ、すっかりその気になってしまっていたのだ。
他に候補と見られる令嬢もいるにはいるが、所詮自分の敵ではないと過剰なまでの自信を持っていたのである。

タイラント侯爵夫妻の愛娘として甘やかされ、我儘放題に育ってきたのも原因だが、この家から数多くの皇太子妃や皇后を輩出してきた歴史が大きいだろう。

彼女自身も皇太子を一人の女として愛しており、いつか嫁ぐ日をそれはそれは心待ちにしていたものである。
未来の皇太子妃ひいては皇后である未来を全く疑わず、それを笠に着てますます我儘三昧だったのは言うまでもない。

はっきり言って性格の悪〜いエリザベッタだが、それなりの取り巻きはいた。
皆、皇后となった彼女から何らかのおこぼれを期待し、群がっている連中であろう。
もしかしたら、親の思惑もあるのかもしれない。

未来の皇后と親しくする事は、大きなメリットとなり得るからだ。

だが、未来とは得てして不確定である。
“未”だ“来”ぬもの、それが“未来”なのだ。

何もかも自分の思い通り、期待通りに事が運ぶとは限らない。

エリザベッタはそれを身をもって思い知らされた。

知らぬ間にエルンスト皇太子が、一人の女性と婚約を交わしたのだ。
しかも相手は平民。

最初にその知らせを聞いた時、目の前が真っ暗になってしまった。

絶望だった。
この世の終わりかと思った。
世界など魔の王によって滅びてしまえとすら思った。

運命を呪い、相手の女を呪わずにはいられなかった。


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