聖皇女コーネリア 外伝

□叔母と姪
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世界の南方に位置するサウリア諸島。
大小様々な島で構成されるその地域には、世界三大国の一つビフレスト公国が存在する。
サウリア諸島で最も大きい島、ブレイダブリク島を領土とする国家だ。

今回語られる物語は、この国の首都ヘイムダルにある大公の居城、ブリーシンガル宮から始まる。


一目で上等と分かるような衣服に身を包んだ幼い少女が、宮殿の廊下を急いでいた。
彼女の名はレイア・ルル・ブリーシンガル。
つい先月に四歳の誕生日を迎えたばかりの、ビフレスト公国の姫君である。

大公夫妻が授かった唯一の男子、エギル公子とその妻カスタローゼ妃の娘だ。
つまりビフレスト公国国家元首の孫娘という、たいへん尊い身分のお子様である。

廊下を急ぐレイア姫はどこかソワソワした様子を見せている。
まるで何かを堪えるかのような……。

「うわ〜ん、漏れちゃうよぉ……」

半べそをかきながら時折足の間を手で抑え、舌ったらずのあどけない口調でそう言う。
どうやらこの姫君、トイレを我慢しているようだ。

レイア姫は焦るあまり、前方への注意が疎かになっていた。
だから、角を曲がってきた人物と出会い頭にぶつかってしまう。

「ひゃっ!?」

ぶつかった弾みで転んでしまったレイア姫は、哀れにも粗相してしまった。
淡いピンク色の子供らしい可愛いドレスが、ぴかぴかに磨きあげられた宮殿の床が、彼女の漏らした液体で汚れていく。

レイア姫とぶつかってしまった人物は、手に持っていた扇で口元を隠しながら眉をしかめる。
軽蔑するような視線で姫を睨み、冷たい口調でこう言った。

「何をやっておりますの?! 汚いではありませんのっ!」

煌めくような金髪に青い瞳という、まるで物語の中に出てくる姫君のごとき可憐な美貌の彼女。
優しげな印象のある娘ではあるが、その口から飛び出す言葉は非常に辛辣である。

お漏らしをしてしまった上、もの凄い剣幕で怒鳴られたレイア姫。
彼女は大きな瞳に涙を浮かべ、ひっくひっくとしゃくりあげていた。

「だって……、だってぇ……!」

「だってじゃありませんわよ! 宮殿の床が汚くなったじゃない! アナタが漏らしたものの臭いだって、きっと染みついているに決まってますわ!」


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