聖皇女コーネリア 外伝
□初めての……
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生まれて初めての体験に、お姫様育ちのコーネリアはドキドキしてしまう。
ちょっぴり怖くもあるが、ワクワクする気持ちもあって……。
「何だか興奮して寝付けないかも……」
そわそわと落ち着かない様子のコーネリアを安心させるかのように、ディオンがそっと肩に手を置く。
「そんなに緊張すんなよ。別に大した事ぁない……ってか、案外呆気ないもんだぜ?」
「そうですけど。でも、初めてですから……」
期待の中にも幾ばくかの不安を覗かせるコーネリアの言葉に、ディオンは苦笑を浮かべた。
「大丈夫だ。俺が色々と教えてやるから……さ」
ディオンは随分と手慣れているらしい。
そんな彼にコーネリアは頼もしさを感じる。
――ディオンさんに任せておけば、何もかも安心ですわね。ですが、わたくしも頑張りませんと……!
何でもかんでも頼ってばかりではいけない。
お互いに助け合って行きたいと、コーネリアは思っていた。
「それじゃあ、俺は薪に使う木を集めるから、コーネは水を汲んで来てくれ」
「はいっ!」
元気良く頷くとコーネリアは、近くの川へと向かう。
――初めての野宿、何だかワクワクしてしまいますわ!
皇都アリストテレシアを出た二人は、エイディン島への唯一の玄関口となる港街ササンを目指していた。
アリストテレシアからササンへは約三日程の距離である。
本来ならば一日以内にアリストテレシアとササンの中継点となる、ロデリア村に辿り着けるのだが……。
――南地区で起きたトラブルのお陰で、随分と時間を浪費してしまいましたわ……。
まあ、そのお陰でディオンと出会えたのだから、良しとするべきだろう。
「さて、この位で充分ですわね」
たっぷりと水を汲むとコーネリアは、元の場所へと戻るのだった。
干し肉のスープとディオンが採って来た木の実だけという味気ないメニューだったが、コーネリアにとっては非常に満ち足りた夕食であった。
宮廷料理しか口にした事がなかったので、初めての野外での食事が楽しくて堪らなかったのだろう。
「ご馳走様でした。私、こういう食事は初めてなので、何だか嬉しいです」
黙っていても、厳選された素材を一流の宮廷料理人が調理した、豪勢な食事が食べられるという立場。
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