絶えたる誓いを護り抜け

□生まれ出さき灯
4ページ/7ページ

「生まれたのか?」
「ああ、勾陣か」

いささか疲労した感のある晴明の手の中には、赤子は納まっていなかった。
いつもなら、騰蛇に合わせる筈なのに。

勾陣の顔からその事を読み取った晴明は、困ったように苦笑した。

「あまり経過がよくなくてな。しばらくは気をつけてやらねば」

生まれた赤子は泣き声も弱々しく、ともすれば命の灯は消えてしまうだろう。
それほどまでに身体の弱い赤子だった。
数日が山場だろう。

「それで、名は?」
「なりあき。成明という」

願いを込めて晴明が名付けた。
その願いのままに生きてくれたらそれでよい。

「体調が良くなったら顔を見てやってくれ」
「わかった」

はたしてそのように身体の弱い赤子に、凶将たる自分が傍に寄る事が良いとは思わないが。

主がそう望むならば顔を見るくらいはいいだろう。

そう納得した所で、その日は異界へと戻って行った。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ