絶えたる誓いを護り抜け
□生まれ出小さき灯
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「生まれたのか?」
「ああ、勾陣か」
いささか疲労した感のある晴明の手の中には、赤子は納まっていなかった。
いつもなら、騰蛇に合わせる筈なのに。
勾陣の顔からその事を読み取った晴明は、困ったように苦笑した。
「あまり経過がよくなくてな。しばらくは気をつけてやらねば」
生まれた赤子は泣き声も弱々しく、ともすれば命の灯は消えてしまうだろう。
それほどまでに身体の弱い赤子だった。
数日が山場だろう。
「それで、名は?」
「なりあき。成明という」
願いを込めて晴明が名付けた。
その願いのままに生きてくれたらそれでよい。
「体調が良くなったら顔を見てやってくれ」
「わかった」
はたしてそのように身体の弱い赤子に、凶将たる自分が傍に寄る事が良いとは思わないが。
主がそう望むならば顔を見るくらいはいいだろう。
そう納得した所で、その日は異界へと戻って行った。