絶えたる誓いを護り抜け
□幼き胸に誓いを秘めて
2ページ/13ページ
「……あれ? ここどこだろう?」
成明の視界に写るのは、どこまでも続く灰色の空と、透き通る水面。
「みずのうえにたってる」
水面のは成明が動く度に波紋を作り、消えていく。
「そらにおつきさま、でてないのに、みなもにはおつきさまがある……。ふしぎなところ」
灰色の空には出ていない月が水面に映り込んでいる。
波紋を受けて揺らめく月は、綺麗な満月。
歩く度に現れる波紋が面白くて、成明は水面を走り出した。
普段は走ったりすれば咎められるのだが、ここには成明しかいない。
元々、肺が弱いのですぐ息が上がるのに、ここではどれだけ走っても胸が痛くならない。
それが嬉しくて、成明は飽きるまでどこまでも走った。
「ここはふしぎ……」
成明以外、誰もいない世界。
普段、誰かが傍にいることが多い成明にとって、一人で広い場所にいることは少し淋しい気もする。
「でも、こわくはない」
この世界は誰もいなくて淋しいけれど、怖さは感じない。
「……よんでる」
空から降る声に導かれるように、成明は瞳を閉じる。
大きく息を吐くと、水面から立ち上った水が成明を包み込んだ。