絶えたる誓いを護り抜け
□空を滑る白い鳥
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「だから師匠の使いは嫌なんだ……」
忌ま忌まし気に呟いた声は、瞬く間に後方へと消えてく。
半ば強引に押し付けられた仕事は、思わぬ余波をもたらした。乗りかかった船とは言え、このまま放置することは出来ない。
風音が耳を叩く。
そっと式の背を撫でれば応えるように甲高い鳴き声が響く。
鳥の形をした式は羽ばたく度に速度を上げ、闇夜を切る様に飛ぶんでいく。
その瞳は三つ。脚も三本。
八咫烏を思わせる姿形を成すが、その色は闇にあって目立つ白。
その背に捕まる人間は、高い位置で括った髪と、両脇に残した分を風に任せ、下に広がる森を睨み続けていた。
まとっている衣は都人のそれではなく、袖のない衣。剥き出しの腕には長めの手甲がはめられている。
注意深く意識を廻らせるが、目標は要として捉える事が出来ない。
いっその事、下に広がる森ごと決着をつけてしまおうか。
そんな物騒な事を考えていると、目標とは違う、出来ればあまり見たくなかった光景が、徐々に大きくなって視界を埋めていく。
「これ以上南下されては……」
時々感じる目標の気配は真っ直ぐにそこへ向かっている。
天照大御神を祖とする者達が住まう都は、眼下に迫っていた。