絶えたる誓いを護り抜け

□生まれ出さき灯
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成明が生まれて数日が経った。

高熱に蝕まれ、その生を危ぶまれた時期もあったが、晴明や吉昌の尽力もありようやく峠を越えた。

「とりあえずは大丈夫だろう」
「ええ、本当に」

心から安堵した様子の吉昌は、ここ数日は気が気ではなかった。
日に何度も様子を見に行っては、声を掛けつづけた。
名を呼び、小さな手を掴み、祝詞を上げ。
ようやく繋いだ大切な子。

「生まれてすぐに、試練を乗り越えたのだ。あの子は強い子になるじゃろうて」
「父上がそのようにおっしゃられるのなら、きっと大丈夫でしょう」
「なんじゃ、自分の子供を信じておらんのか」
「そんなことはありませんよ。大陰陽師の言霊があれば大丈夫だろうと言っているんです」
「何でもわし頼みにするんじゃないわい」
「何と言っても、私はそんな貴方の息子ですから」

安堵からか、表情も雰囲気も穏やかになった息子の様子に晴明も顔をほころばせる。
何日か休んだ分、これから数日は滞った仕事に埋まれることになるだろう。

それでも、生まれた子が元気に生きていてくれたなら、そんなことは些細な事なのだ。


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