短編
□コノ醜イ世界デ
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「ごめんな、アニス」
その一言で、彼が心を決めてしまったのが嫌でも分かった
分かりたくなんてなかったのに!
「・・・なんで?」
どうして、彼でなければならないのか
罪を負うべきはこの世界だというのに!
「なんで、なんでよ!何でルークがそんなことしなきゃならないわけ!?」
怒鳴り散らす私に、彼はただ困ったように微笑むだけ
「・・・アニス」
「イヤ!絶対イヤ!認めないから!」
涙がにじむ。悔しくて、悲しくて、切なくて・・・
「ねぇ、言ってよ!一言でいいから!こんな世界嫌いだって!憎いって!死にたくないって!!」
お願いだからそんな顔で笑わないで
「そしたら、そしたら私が、連れ出してあげるから!一緒に逃げてあげるから!」
涙が、止まらない。それでもただ、彼は優しい顔で私を見る
「私が、全部背負うから!命も、罪も、運命も!だからっ・・・!」
のどが詰まって、言葉が出ない
「・・・ありがとう、アニス」
彼は静かに、私を抱きしめる
「でも、無理だよ。だって、俺は」
今こんなにも、幸せだから
コノ醜イ世界デ
(あなたがこの上もなく幸福そうに笑うから)
(私はあなたを奪えない)
2009.10.2
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