定色

□金銀花
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痛みが和らいだ私の腹にのせられた温かな手にそっと触れた。

それは柔らかな小さな手で、私はひどく驚いて目を開ける。

白い天井が見えた。

恐る恐る横を見る。

卯之花隊長の優しく微笑む顔があった。

あぁ、そうだ。私は戦いでひどい怪我をして、


…!


「ギン!」


思わず声に出てしまっていた。

彼女が辛そうに眉根を寄せて、そうして、目をわずかに逸らした。

刹那、私は理解した。

この世界に彼の存在を感じない。

どんなに離れても、


居る。


何時だって、感じる事が出来た彼の存在を、今はどうしても探す事が出来なかった。

私は知らず彼女に目で問うたのだろうか。

聞きたくない。けれど、聞いて置かねばならない事。

彼女はぽつりぽつりと問わず語りに語った。

藍染が封印され、判決を待っている事。

空座町が無事現世に戻った事。

一護が力を失った事。


そして、消えたギンの事。


私達死神は死んだら魂は消えて、この世界を創る霊子の元になるのですよね。

問うてみた。

遠い昔に学んだ自分達の行くすえ

そうですね。その様に定められています。

彼女は真っすぐに私の目を見てゆっくりと答えた。

もう、充分だった。

それ以上聞く勇気はなかった。



……………


吉良の応急処置と四番隊の手厚い看護で、私は驚くほど早く回復した。

卯之花隊長の話では、霊圧がほとんど減って居なかったから、傷の治りも早かったとの事だった。

ただ、私は、また、彼に救われたのだと知っていた。

未だ罪人のままでいる彼の本当を知る者は、自分しかいない事がやる瀬なかったが、上への報告も何処でうやむやになったのか、彼の事はまるで無かったかの様に日々が過ぎていく。

自分一人がおいてきぼりだった。

退院後、幾日か休暇を貰ったがやる事もなく、しかし部屋で一人じっとしているにも耐え切れず、あてど無くさ迷うていた。

ギンとそぞろ歩いた小径。

知らず辿っていた。

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