定色
□雲の上
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さあ、君の卍解を説明してくれたまえ。
そうとでも言うかの様に上司は穏やかに微笑んでいる。
ギンはつまらなさそうに口を開いた。
「ただ伸びるだけですわ。」
「ほう」
「伸びる速さは一瞬やさかい。刀言うよりなんや槍やね。名前の通りやったですわ。」
「雷雲はんのちょぉ上までは伸びるみたいです。」
「なるほど。」
藍染は答えて、椅子から立ち上がり窓の外をみた。
見事な金床型の入道雲が空を覆い始めていた。
「夕立が来るね。」
「通り雨ですわ。じきに止みます。」
「君の斬魄刀はあの金床の丁度上まで届くんだね。重霊地付近ならば現世の単位で言えば高度約13km。あらゆる天候にも左右されない高さだ。」
独り言のように藍染は続けた。
「穏やかに暮らせるかもしれないよ。」
言ってからさも楽しそうに微笑んでギンに問う。
「その長さには意味があるのかい。」
「いつも言うとりますけど、意味のあるものなんぞ何もありまへんし。ただ『在る』だけや。意味なんてそん人そん人が後から自分に都合よう後付けするだけやと思いますよ。」
いかにもつまらなそうにギンが応えた。
「意味があったほうが楽しいとは思わないかい。」
「さぁ、その意味づけにも由るんじゃないですかね。」
フンと鼻を鳴らしてギンが答えると、藍染は声をたてて笑った。
君は本当に面白い子だ。そういってクスクス笑う藍染にほんの少しだけ肩をすくめて見せてギンは執務室を出た。
外に出て不気味にそびえる金床雲を見上げた。
『ギン。あの雲の上は雨も雷もないの?』
『そやろね。』
『それなら、私、あの雲の上で住みたい。お日様も近くてきっと暖ったかいよ。』
『多分、なんもあらへんで。それに雨も降らんし風もふかんなんてつまらへんし。』
『ギンと一緒ならいいの。』
そう言って下を向いて顔を赤らめた乱菊の顔を思い出した。
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