定色

□霜柱
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霜月の朝。かなり冷え込むようになって、秋の恵みも見当たらない様になり、幼い二人には辛い時期になっていた。


「お腹すいたね。」

「そやね。」

うつむいてギンが答える。


彼はいつも飢えない程度には食べ物を何処からか用意してきてくれた。

けれども、その度少しずつ無口になっていく。

お互いに重くなって、それでも一緒にいた。居るしかなかった。

彼のお荷物になっていると感じるのはとても辛いのに。



その晩彼はまた居なくなった。



出会ってから一年以上の時が過ぎていた。

彼が不意に居なくなり、何日か戻らないといった事は何度もあるようになっていた。

怖くて不安で、でも、彼が居ない事でほんの少しホッとする。そんな自分が嫌だった。

だから、いつでも彼が帰ってきたときは、何にもなかった事にして出迎える。明るく。明るく。

ギンはほんの少し眉を下げて、私を見て、それから少しだけ口角を上げて微笑んでくれる。

その顔だけが見たかった。



一週間ほど経った朝方、ギンがふらりと帰ってきた。

今度は、何故か食べ物やお金などを沢山持ち帰っていて、無表情な顔で私に手渡してくれた。

なんだかとても怯えたが、ギンに知られないように急いで笑みを拵える。

そんな私の顔を見て、彼は一瞬切なそうな顔をして、それから急に立ち上がって外に向かう。


「薪でもひらってくるわ。」

戸口で振り向いてそう言った。

「私も行く。」

彼の後を追う。

彼は振り向いて

「まだ、冷やい。家ん中居り。」

作った優しい顔で言う。

私は急に悔しくなって、

「嫌だ。ついてく。」

少し大きな声を出した。


彼はわざとらしく大きなため息をついて、好きにしやと言った。



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