定色
□流れ星
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夜が明ける前には目が覚める。そして、早くここから離れないといけないという声が体の中からする。
ギンは、怯えて身支度をした。
なぜ、自分が怯えるのかはっきりとは分からないが、いつでも焦燥感だけで体を動かす。
破滅の予感に苛まれる。
ギンは大事な人を起こさない様、そっとドアを開けて立ち去った。
満天の星空に千の矢の様に降る星。
ボクは祈る。どうか。どうか。
あの蜂蜜色が、碧星が、失われることのないように。
.......
眠ったフリをしていた乱菊は布団から出て窓から彼の後姿を追った。
星明りだけの闇夜。でも、星が流れる度、幽かに銀色の髪が光る。
満天の星空に降る千の矢のような星。
私は祈る。どうか。どうか。
もう、二度とあの人が私を置いていかないように。
.......
窓際で少し眠ってしまったのか、気がつくと東の空が少しだけ白けていた。
紫色の西の空にもう勇者は居らず、シリウスが青の色をくすませて頼りなげに輝いていた。
流れ星はもう収まっていて、星も減ってしまったように見える。
乱菊は、祈りは通じないであろう事を思って、ふっと笑みをもらす。
貴方は、一人で総てを終わらせる。いつでも、そう。
私に貴方を預けることはない。私は貴方の中に入れない。
虚は心に孔が開いている人の成れの果てだというけれど、私たちとどう違うのだろうと思う。
私たちとて、見えないというだけで、孔は在り、ましてや塞がる事はないのだ。ならば、私たちはどこから来てどこへ行くの。何のために。
生きる時間が長くなる程に、序々に大きくなる心の孔。
気が遠くなる思いで、乱菊はみるみる色を変えていく空を見つめていた。
と、その時、
名残のように流れ星がひとつだけ流れた。
祈るにはあまりに刹那の時間。
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