定色

□かささぎ橋
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上司に伴われて、久しぶりに外出した。

仕事だし楽しいと言うこともないが、暫くぶりの街歩きは気がまぎれる。

今日は七夕。そのせいか、あちらこちらで笹飾りが飾られていた。

ああ、もうそんな時期か

季節は知らぬ間に自分を置き去りに過ぎている。

ほうと小さく溜息をついて、乱菊は顔を上げた。梅雨の中休みなのか、早めの梅雨明けなのかはわからないが、空は晴れ上がって遠くには入道雲まで顔をのぞかせていた。

「あーあ、あっつい筈ですよ。ねえ、たいちょ」

ちょっとで良いですから氷を出してくださいよぅ

などと軽口をたたいてみる。

小さい隊長は眉根に深く皺を寄せながら、「ばかやろう」一つ呟いてさっさと先を急ぐ。

前を行く彼の口元がそれでも少し上に向いて曲がったのが見えて、乱菊はクスリと喉の奥で笑った。

やだ、笑い方があいつと同じになってしまってたわ。

さらりとした銀の髪を想う。

抑えるようにくつくつ笑うくせのあった、日焼け知らずの彼の顔を思い出しながら前も見ずに歩いていたら、空を見上げて立ち止まっていた上司に思い切りぶつかった。

「イタっ。す、すみません」

ぶつかられた事にあまり頓着する様子もなく、彼は空をまだ見つめている。

「どうなさいました。」

「ああ、今年は逢えるみてぇだなと思って」

「えぇ?誰とです。」

「あ゛?牽牛と織女に決まってるだろが」

乱菊は、一瞬あっけにとられて、それから盛大に噴出した。

「えぇえー、たいちょ、どうしちゃったんですか。熱気に当たっちゃったんですかぁ。乙女過ぎますよ」

涙を流して乱菊は笑った。

「うるせぇ。俺はお前みたいに色気も風流もくそもない女とは違うんだ。」

顔を真っ赤にして日番谷は先を急ごうと歩き始めた。

「色気はまんまんですよぅ。この神々の谷間が見えないんですか。」

急いで駆け寄ったために思いっきり胸を彼にぶつけてしまった。

「痛えっ!恥らいってもんがお前には無いのかよ。それに、暑苦しい。寄んな」

「えぇー遠慮は禁物ですよ。そうだ。そんなに暑いんなら、ちょうど良いところに甘味屋が。くずきりかなにか冷たいもの上がりましょ。氷あずきでもいいですよ。ほら小旗が下がってる。ちょっと涼みましょうよ」

「お前、計画的だろ。」

「いいじゃないですか。ほらほら」

久しぶりにはしゃぐ乱菊に日番谷は刹那目を細めて、彼女に引っ張られるように甘味処ののれんをくぐった

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