定色

□七夕
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何や雨か


窓から空を見上げた

「仕事のしようが足りなかったんですよ。バチですね。」

沢山の書類に埋もれたようになりながら顔も上げず副官が呟く

「何や。聞こえたん。何でバチやねん」


微妙な顔をして返事をしない部下の態度に、苦笑いしながらギンは席に戻った。

辺りの空気は重く湿って暑苦しく纏わり付いてきて、窓を開けてもさっぱり涼しくもならない。

夏も雨も嫌いでは無かったが、こうも蒸し暑いと、体力が絡め取られる様で不快だった。


風呂でも行こうか


急に思い立って副官を誘う


そや、2番隊に出けた風呂大っきいて露天もあるらしいで。これから行かへん

仕事が終わりそうに無いので


案外申し訳なさそうに応える吉良に軽く笑って、ギンは新しく出来たという大浴場に向かった。


どうせ濡れるんやし…


雨脚は激しくなってきていたが、そのまま傘もささず濡れながら歩く。

痛みを覚える程当たって来る雨粒を受け止めながら、何だか楽しくなって来た。


あァ今日は七夕か。
残念やったねェ 牽牛はんも


優先順位を間違えた愚かな男の話を思い出す。

ええやん 一生会えん訳やあるまいし。


一人ごちた。


愚かさでは自分も負けへんかもなァ


知らず口の端が上がる。


その時辺りが一瞬明るくなった


何や。雷さんか
こわこわヘソ取られるで。


しばらくクスクス笑いながら雨を楽しんでいたが、いきなり大きく体が震えた。


流石に寒なったわ


向かう足を速めた。

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