定色
□雲の上
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ナア キニイッタカ?
オマエガノゾムナラバ、マダ...。
あァ、ええわ。ここで。
充分や。
刀の柄の上に乗ってギンは辺りを見回した。
「へえ、ホンマになんもあらへんのやな。殺風景なモンや。」
眼下には見渡す限りの雲海が広がっている。
所々から思い出したかのように稲妻の花が湧き出すように咲き、沈んでいく。
「へえ、菊の花みたいやな。下の雷さんとはまるで別モンや。」
足元からは、神鎗を通して雷の残滓が伝わって来る。
「雲の下は嵐やいうんに、穏やかやなァ。なんや物足りんわ」
ギンは一人ごちた。
「ほんまになんもあらへんねや。雨も風も。お陽さんだけやん。ちっとも温うないけど。」
ギンは大きくくしゃみをし、それからギュゥと伸びをした。
「もう、ええわ。降りるで。」
アア、オマエガノゾムナラ。
神鎗はそう答えた。
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