小説2

□第9話 最終予選
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前回のハロウィンライブによって世間の評価を一気に高めたμ's



今や【A-RISE最大のライバル】とまで言われるようになっていた




来るラブライブ最終予選まで残り3週間




部室でその作戦会議を行っているメンバー達





海未「曲、振付、衣装は自由。

何であれ一曲歌い切ることは今までと変わりません」



真姫「最終予選だからこそ、シンプルに実力を試そうって事ね」




凛「望むところにゃあ!」




にこ「今まで歌った曲は当然完成度は高いけど、目新しさに欠ける………


かといって、新曲にしたらしたで新鮮さは出るけど、どうしても完成度は低くなる……


この辺りが難しいわね」




穂乃果「うううーん、どうしようか〜〜………」ウーン



全員が頭を悩ませている時


部室の扉が開かれた




紫苑「遅れてごめん」




ことり「あ、紫苑くん」



急いで来たらしい紫苑はまだスーツ姿である



紫苑も席に着く




穂乃果「紫苑くん、どうしたらいいと思う?」




紫苑「ん?なにを?」



絵里「最終予選で歌う曲。


出来の良い今までの曲にするか

思い切って新曲にしてみるか、悩んでるんだけど……」




紫苑「……………その前に僕から一つだけいいかな?」




μ's「???」




唐突な話題の振りにメンバーは少し困惑した




紫苑「最終予選の前に……

君達9人は本当の意味で一つにならなくちゃいけない」



海未「えっ……」



花陽「どういう、事……?」



にこ「私達はとっくにそうでしょ?

ラブライブという目的の元に集まって
それを目指してここまで頑張ってきた!


これが一つなってなくちゃ、なんだって言うのよ!」



紫苑「………………分からない人は、分からないままでいいから聞いててほしいんだけど…」




絵里「…………紫苑…?」




紫苑は瞑目して淡々と語り始めた




紫苑「もう君は独りじゃない。


ここに居る全員が全員の味方だ……


嬉しい事、楽しい事、辛い事……

全部分かち合ってくれる。



一歩を踏み出すのはとても勇気がいる事かもしれない。


けど頑張って踏み出した先にはもっと明るい世界が待ってるよ。


だから、素直に動いてみたらどう?」




真姫「……………なに?


一体、誰に向かって言ってるの?」キョトン




紫苑「それは秘密。


プライバシーとかあるしね。

けど、伝わってるといいな」クスッ




希「…………………」




絵里「(今の言葉は、もしかして……)」チラッ




にこ「……………まあ、ともかく。


当面の問題は曲ね。
今日は元々ダンス練習は無い日だし
じっくり考えましょう」




紫苑「その方が得策だね。


じゃあ僕はまだ仕事が残ってるから一旦戻るよ」ガタッ




絵里「えっ?もう?」



凛「紫苑くんなにしにきたのー?」ジトー




紫苑「さっきの言葉を伝えに来たの。


そろそろ大丈夫なんじゃないかって思ってね。


それじゃ」ガチャッ、バタン




紫苑が部室から出て行くと暫しの静寂




ことり「ホントに………誰に言ってたのかな、あの言葉……」




花陽「うーん………?………」




絵里「……………さあ、それは置いといて。


曲の話をしましょう」



にこ「そうよー。早く決めてその練習もしなくちゃならないんだから」



穂乃果「…………そうだねっ。気にしてても仕方ないや!


よしっ、切り替えよう!」




希「…………………」






***********************


放課後




開口一番


意見を出したのはメンバーにとっては意外な人物だった




希「ラブソングとかはどうやろか?」





真姫「ラブソング?」




希「そう。まだ歌ったことないやろ?」



普段はみんなの意見を総括したり

アイデアの外堀を埋めていく希からの珍しい提案



絵里「希……………あなた……」



にこ「(やっぱり…………そういうことね)」



同じ3年生である二人は

朝に紫苑が言っていた言葉の意味をいち早く理解した




絵里「(あれはやっぱり、希に向けて言ってたのね)」



ともあれ、紫苑があんな言い方をしたということは


わざわざ公にするべきことではないのだろう



絵里とにこもそのまま話を続けていく




花陽「なぁるほどぉッ!!

アイドルにおいて恋の歌即ちラブソングは必要不可欠!

定番曲の中に必ず入ってくる歌の一つなのに

それが今までμ'sには存在していなかった!

それはなぜっ!?」ガタッ



穂乃果「…………それは」チラッ




ことり「だって………」チラッ




海未「……な、なんですかこっちを見て……!?」タジッ


全員の視線がμ'sの作詞担当である海未へと突き刺さっている




そして発案者の希がラブソングの存在しない理由を

あっさりと指摘した



希「海未ちゃん、恋愛経験ないんやろ?」




海未「Σっふぇっ!?//////


どどど、どうして決めつけるんですか!!////」ドキドキ




穂乃果「じゃああるのっ!?」ズイッ



ことり「あるのっ!!?海未ちゃん!!?」ズイッ


海未「Σひいっ!?」ビクッ



にこ「あるのっ!?」ズイッ


花陽「あるのぉっ!?」ズイッ



凛「あるにゃあああっ!!?」ズイッズイッ




海未「ひぅうううう…………」シナシナ




5人の迫力ある問い詰めに
部室の壁際まで追いやられた海未は



その場にへなへなと力尽きるように座り込んだ



海未「………………ありません」グスッ



凛「なあーんだ、やっぱりかー」



ことり「よかったぁ……」ホッ



穂乃果「もおおお、変に溜めないでよー!


ドキドキするよー!」バンバン



肩を落として意気消沈している海未の背中を

バシバシと叩く穂乃果



海未「っ何ですかっもうっ!!


穂乃果もことりもないでしょう!?」ガバッ




穂乃果「それは…………」アセッ



ことり「う、うん………」アセアセ



海未「ほら見なさい!」フンッ



真姫「けど、結局詞も曲もイメージが大切だから


分からないことを曲にしろって言われても
無理があるわよ」



その諦めの入った真姫の言葉に絵里が焦ったように反応した




絵里「で、でも諦めるのは早いんじゃない?」



真姫「………………絵里………?」



希「………そうやね。


イメージがつかないんやったら実際にそれっぽくやってみようか」ニコ



花陽「やってみる…………?」クビカシゲ




意味有りげに微笑んだ希は


持参のビデオカメラを取り出すと


他のメンバーを連れて外に部室の外に出た





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