小説2

□第3話 合宿海編!
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三連休初日の早朝



最寄りの駅には既にμ'sメンバーの何人かが集合していた





ことり「来てないのは………」




海未「例によって、穂乃果ですね…」ハァ



絵里「あと、紫苑もね」




花陽「何か……イメージ沸きませんね、遅刻する紫苑先生なんて」



凛「確かに!何でも完璧にこなしそうなのにね」




絵里「自分で朝は弱いって言ってたからね」




希「あっ、来たみたいよ」




集合時間の10分前に紫苑が姿を見せた



欠伸をしながらこっちに歩いてくる




海未「あんな風に欠伸をしていると、確かに私達と同年代だという事が分かりますね」クスクス




ことり「そうだね。今でも先生っていうのは信じられない位だし…」




絵里「…………ちょっと可愛い……///」




そこで紫苑がメンバーに気づく





紫苑「おはよう、来るの早いね皆」



真姫「1人を除いて、だけど」チラッ



紫苑「ん?」




真姫が目をやった方向には




花陽「穂乃果ちゃん!」




息を切らしながら猛ダッシュで走ってくる穂乃果の姿があった



穂乃果「はあっ、はあっ、ごめーん!遅れちゃった!?」ゼーハー



にこ「セーフよ。紫苑先生も今来たばかりだし」




穂乃果「よかったあー、必死に走った甲斐があったよー」



絵里「ていうか何よその大荷物は……」



背中に背負ったリュックとは別に大きなカバンを持ってきている穂乃果




穂乃果「お菓子とかゲームとか!!」




海未「……………はぁ、また綻びだらけの合宿になりそうな予感が…」




ことり「逆に紫苑先生は荷物少ないよね……」




紫苑「まぁね、大したもの持ってきてないし」




紫苑は手提げかばんのみの軽装



希「ほな、じゃあそろそろ電車乗ろか?」



真姫「そうね、行きましょ」



メンバーが次々に改札口を通過していく中

最後尾を歩く紫苑と絵里




絵里の服装はこの日の為におろしたての私服である


昨夜は紫苑にどんな反応されるかなとか

悪目立ちしていないかな、とかずっと考えていた



紫苑「絵里………そんな服着てると……」




絵里「なっ、何?」アセアセ




明らかに否定的な物言いが強い紫苑の言葉


やっぱり普通の格好で来ればよかったかな……



と、心の中で落ち込む絵里




紫苑「まるでモデルみたいだね…!!」




絵里「……………え?」キョトン




発せられたのはまさかの称賛



それも昨日は思いつかなかった斜め上を行くほどの褒め言葉




紫苑「練習見てたら分かったけど、絵里は体幹が良いし、魅せ方が上手いから……そんな服装だとさらに際立って見えるよ」



絵里「そ、そんな……ことないわよ…///////」カァァァッ




服装だけでなくさり気に普段の振る舞いも褒められて
内心舞い上がってしまう絵里



紫苑「クスッ……自分の魅力には案外気付けないものだよ」スタスタ




改札口を先に抜けていく紫苑




絵里「………………あなただってそうじゃない……//////////」ボソッ




ポツリと呟いた声は当然紫苑には届かず


絵里も改札を抜けて、電車に乗り込んでいった










********************





全員が電車に乗り込み
問題となるのは座る席



1つのボックス席に4人が座れる形になっており

通常なら4人、3人、3人で別れる所だが


一部の人間が気を利かせて
4人、4人、2人という配置にした



必然、最後に入ってきた紫苑と絵里が2人に該当する




紫苑と向かい合わせに座り、妙な思惑を感じる絵里




絵里「まさか……これは……」チラッ




前方の席を見ると紫苑の死角から
にこや穂乃果が顔を出してウインクをしている




絵里「あの子達………!//」




と、凄んでみても
想い人と2人というのはやはり嬉しいわけで

怒るに怒れない絵里であった




そして電車が動き出す



紫苑「………………ふあ………」フアーァ



手で口を隠し、大欠伸をかます紫苑




絵里「ふふ……本当に朝弱いのね」クスッ




紫苑「うん………割りと極端な体質でね……夜はずっと起きていられるけど、いざ寝たら起きられなくなるタイプだから……」




絵里「もう…子供みたいよ、それじゃあ」クスクス




紫苑「………耳が痛いな」ニガワライ



図星をつかれて絵里から目をそらす紫苑




紫苑「そういえば以前、僕の寝起きについて理事長から変な事を聞いたな……」




絵里「理事長から?どんな?」




紫苑「以前、ライブしたスタジオでうっかり寝ちゃってた事があって、その時理事長が起こしてくれたんだけど………」



紫苑は忘れていたことを思い出すように頭を押さえている




紫苑「なんか…

【紫苑くんは起こしちゃダメ!色々すごいからっ】

みたいな事を真っ赤な顔で言われたんだ」




絵里「…………えっと、どういう意味?」クビカシゲ




紫苑「さあ?その後聞いても赤面して言葉を濁すばかりで教えてくれなかったから」



絵里「そうなんだ………」




するとそこで




ヴーッヴーッヴーッ……




紫苑「ん、僕だ」スッ




紫苑の携帯が鳴った



紫苑「ごめん。ちょっと出る」



絵里「うん」




紫苑「はい。…………ええ、お久しぶりです。……少し前に知り合いに頼まれて帰国してたんです」



聞く限りどうやら知己のようだ


そして紫苑の口ぶりは相手が目上の人間の場合に使うものである




紫苑「………依頼ですか?………結構急ですね…………まぁ、わかりました………けど、すみません。1つ言わせてもらうと」




そこで紫苑はチラッと絵里の方を見た




絵里「?」




紫苑「今ちょっと面白い事してる最中なので、その片手間になっても良ければ、ですが」




絵里「………紫苑……?」キョトン




紫苑「………そうですか?………はい、確かに承りました。じゃあこれで………ええ」ピッ




電話を仕舞う紫苑




紫苑「前に話したクリエーターの人から。作曲の依頼だってさ」




にこ「Σ作曲っ!?」ガバッ



後ろの座席からにこが顔を出して聞いてくる



紫苑「うん。連休空けるまでに1曲作ってほしいらしい」



真姫「それ引き受けたの?」




真姫もにこと同様に身を乗り出す




紫苑「大切な収入源だからね。恩師でもあるし、無下にはできないよ」ニガワライ



海未「では、私達の指導と曲作りを両立するということですか…!?」




紫苑「いや、そんな中途半端な事はしないよ。指導中は指導の事しか考えない。作曲も同様だ」




絵里「………あまり無理しないでね?」




心配そうな声音で紫苑を気遣う絵里




紫苑「……心配してくれてありがとう」ニコッ




絵里「……………当たり前じゃない///」カァァァ




穂乃果「わあーっ!!みんな見てーっ!!」




穂乃果が窓に顔を張り付けて外を覗く


釣られて他のメンバーも、外を見た




そこには輝くスカイブルーの景気




μ's「海だあーーっ!!!」ワアアアッ



にこ「ん?」チラッ




海未「Σこっちを見ないでください!うみ違いです!!」




凛「窓あけちゃおっ!」ガララッ




絵里「こっちも開けましょ!」



紫苑「ああ、せーのっ」ガララッ



絵里と一緒に窓を上げると

途端に磯の香りと心地よい風が入り込んでくる




絵里「前に来た時も見たけど、やっぱり綺麗ね………ねえ、紫苑………」




正面の紫苑に視線を移した絵里



それはとても美しく、儚く、清廉として



まるで絵画のような紫苑の佇まい



海を見つめる瞳、表情


風に靡く暗色の髪




絵里「………………はぁ……っ……」ドキドキ




全てが絵里を魅了した




紫苑「………………ん?なに、絵里?」




絵里「………えっ!あ…!//////な、何でもない………/////////」アセアセ



咄嗟に我に還って、振り払うように海を見つめる絵里




紫苑「………………?」




絵里の態度を不思議に思う紫苑だが

海に夢中となった様子の絵里を見て


自分も海に視線を戻した




絵里「………………////」チラッ




気づかれないように隣の紫苑に視線だけを動かす



相手はやっぱり魅力的で





絵里「(…………………夢中になったなんて…………絶対言えない………っ/////////)」ドキドキ






そしてそれから少しして電車は目的の所に到着した





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