小説2

□第2話 紫苑入学
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絵里「それじゃあ行ってきます」バタン



紫苑と出会った翌日の朝



いつも通りに家を出て、μ'sの朝練に向かう絵里




絵里「今日から、か………」





今日から紫苑が教育実習生として学院にやってくる




絵里「……………////////////」カァァァッ




昨日の出来事を思い出して1人赤面する絵里




驚異的な歌とダンスのパフォーマンス


魅力的な人間性




そして温かな優しさ




人を恋させるには十分過ぎるファクターの持ち主の青年




絵里「すごいなぁ…………完璧じゃない」




はぁ、と呆れ半分称賛半分の溜息をついて学校へ急ぐ絵里




すると目の前の路地からスーツを来た青年が現れた




絵里「あっ!」




紫苑「ん…?」




現れた例の青年、紫苑とばったり遭遇する絵里


恋情を自覚してしまった以上少なからず気恥ずかしさを感じるが

朝1番に想い人に会えたという喜びがそれを凌駕した




絵里「おはよう!紫苑」タタッ



駆け寄って挨拶をする




紫苑「おはよう、絵里」ニコッ



そのまま並んで歩き出す2人




紫苑「随分早いね」



絵里「ええ。いつも早めに登校して、歌の練習をね」



紫苑「みんなで?」



絵里「そうよ」



紫苑「へえ………偉いね。僕は朝弱いから続かないかもな………ふあ……」フワァ…



手で口を押さえて欠伸をする紫苑を見てクスリと笑う絵里




絵里「ちょっと、しっかりしてね?これからは紫苑も朝練に参加するんだから」クスッ




紫苑「わかってる。その辺りはしっかりするよ」



そこで絵里は紫苑のスーツ姿を見下ろす




絵里「今日はスーツなのね……」




紫苑「ん?ああ…一応正式にお世話になるわけだからね。それに朝礼で挨拶もしなきゃいけないみたいだし」




絵里「ふーん……」チラッチラッ




昨日とは違って凛々しい格好をしている紫苑を横目でチラチラと盗み見る絵里




絵里「普通に似合ってるわね……」ボソ…





紫苑「そう、かな?ありがとう」




絵里「えっ!?/////き、聞こえてた……?///」カァァァ




相当小さな声だったのに……


と、心で思う絵里



返事をしてきた紫苑に驚いていた




紫苑「僕は人より耳が良いから。聞こえちゃったよ」クスッ





絵里「うぅ…………///////」ウツムキ




紫苑「………っ!絵里っ!」グイッ




そこでいきなり紫苑は隣にいた絵里の腕を強く引いた




絵里「えっ?Σわっ!?///////」バフッ



勢い良く紫苑の胸に収まる絵里




そのすぐ横を住宅街では違反クラスのスピードで自動車が通り過ぎて行った




紫苑「排気音の鳴らない車か………なんて危ないスピードだ……」



絵里「(わっ、えっ?今私っ!?だだ、だきっ……抱き締められ……っ!?//////////)」ドキドキ




紫苑の胸に密着したせいで
緊張して思考がまとまらない



紫苑「平気だった?」



そんな心境の絵里を知ってか知らずか
真剣な表情で絵里を見下す紫苑




絵里「う………………うん…………/////////」コクリ




紫苑「…………よかった」フゥ



絵里を開放して安心の一息をつく紫苑




絵里「ありがとう………//////」




紫苑「どういたしまして」




絵里「(力………強かったな………///////)」ドキドキ




そして始業の1時間前に学院に到着した





昇降口で靴を履き替える2人




紫苑「それじゃあ僕は色々手続きとかあるから、ここで」




絵里「ええ。……あっ!ねぇ!」





紫苑「何?」




絵里「μ'sの指導、今日から始めるのよね?」




紫苑「そのつもりだよ。教育実習生は事後処理とかないから、放課後はすぐに屋上にいくよ」





絵里「分かったわ。みんなにも伝えておくから」




紫苑「うん。よろしくね」スタスタ




そのまま踵を返して職員室の方へ歩いていく紫苑





絵里「…………自然に話せてた、わよね…?///顔赤くなってなかったかしら……/////」ドキドキ




今更になってそんな心境に陥る絵里




絵里「と、とにかく!今は練習に行かないと!///」




1人で気合を入れて屋上に向かった







************************************





朝練終了後の朝礼の時間となり

全校生徒が講堂に集まっていた



放送部司会の元、淡々と朝礼は進んでいく





穂乃果「紫苑くんまだかなー?」ヒソヒソ




海未「もうすぐだと思います。あまり時間もありませんし」ヒソヒソ



ことり「なんだかドキドキしてきたよ……」ドキドキ




μ's2年生組が生徒席の中心辺りで小声で話している




すると場を見計らったかのようにアナウンスがかかった





放送部『ではここで、本日より我が校に研修に来られた教育実習生の方を紹介します。どうぞ』




穂乃果「きた!」




ステージ中央のの台座に向かって歩き出す教育実習生




その容姿にざわつき始める講堂内





そして




紫苑『はじめまして。本日から国立音ノ木坂学院の教育実習生となります、蓮条紫苑です』




講堂に紫苑の透き通るような声が響き渡る



その見た目と声にさらにざわつきが大きくなった




紫苑『皆さんとは歳も近いので、気軽に話しかけてくれたら嬉しいです。これからよろしくお願いします』ペコリ



放送部『なお、蓮条先生には各学年の音楽と保健体育の科目を受け持っていただき、加えて本校のスクールアイドルユニット【μ's】の指導をなさる予定です』




その事に更に更にざわつきが広がった




理事長『唐突に【μ's】の指導をすると言われてもピンと来ないと思うので、実力を知ってもらう為、蓮条先生にはここで1曲披露して頂きたいと思います』





紫苑「………………初耳なんだけど」




希「ありゃりゃ、紫苑くん踊ることになってたんやね」



絵里「みたいね」




理事長『では蓮条先生?準備をお願いします』




紫苑「………………全くあの人は…」ハァ





舞台袖でマイクを握り、にこやかに手を振っている南理事長を見て溜息をつく




紫苑「まぁ、それで生徒達の不信感がなくなるなら………」




紫苑は台座を袖までずらして、舞台をサラにする



紫苑「理事長……」ジトー




理事長「まあまあ、いいじゃない。その方が生徒達もあなたへの理解が早まるでしょう?」





紫苑「だといいですけどね。曲は何を?」





理事長「【HELLO WORLD】をお願い」




紫苑「了解です。じゃあ行ってきます」




再び舞台の中央に戻る紫苑




放送部『それではいきましょう。曲名は【HELLO WORLD】です!』




紫苑「…………ふぅ…………」シュルッ




ネクタイを弛めて首元を開け、気持ちを切り替える



絵里「………っ……///////」ドキッ




生徒1「ね、ねえ………//////」ドキドキ




生徒2「う………うん………//////」ドキドキ




ネクタイを弛めた際に迸った色気に
絵里を含めた女生徒の殆どがすでに魅了され始めていた




そして曲の前奏が始まった






ステージで軽やかに舞う紫苑を見て息を呑む生徒達




紫苑「【見失った筈の明日も昨日も、痛みも叫びも逃れられない世界で】」





キレのある鋭い美声とダイナミックかつ繊細に繰り出されるダンスアクション



それは見る者の目と心を掴んで離さない





ことり「あんな風に歌が上手くて………それに楽しそうに踊ってる……」




海未「私達も…………成れるでしょうか」





穂乃果「…………なろうよ!なってみせようよ!!」グッ






紫苑「【いつか振り返って、笑えるようにと願った】」





そして曲が終わり最後の後奏が流れ





紫苑「………………っ!」ジャァンッ




一寸の狂いもない完璧な終了のポーズを決めた瞬間





全校生徒「っきゃあああああああぁぁああっ!!!」




講堂を揺るがすくらいの黄色い嬌声が上がる




希「うひゃーっ!すごいな〜スタンディングオベーションや」



にこ「っていうあんたもじゃない」



希「まぁなぁ、あんなカッコええんやもん。そりゃこうなるよ。なぁえりち?」




絵里「ええ………ホントにかっこいいわ……////////紫苑……//////」ポー




希「ほらな?」



にこ「絵里……あんたマジ惚れじゃない!」




絵里「Σっち!違っ………今のは無意識で…っ//////」アセアセ




希「その方が信憑性あるよー」ニヤニヤ




絵里「希っ!!//////」



鳴り止まぬ歓声を一身に受けながら
紫苑は一礼してネクタイを締め直す





放送部『………はっ!みっ皆さんお静かに!まだ朝礼の途中です!お静かに!!』アセアセ




その焦った声に徐々に静寂を取り戻していく講堂内



放送部『ありがとう………ございました……ではこれにて、本日の朝礼を終了します……』





紫苑「………ふぅ……………」スッ





舞台袖に移動しようとする紫苑に




絵里「…………///////」フリフリ




思わず大きく手を振ってしまう絵里




紫苑「ん……?あ…………クスッ」フリフリ




絵里「っ………///////」カァァァッ




ちゃんと気づいて、手を振り返してくれた紫苑に
 
絵里はまた好意が募っていく




そのまま紫苑は退場し、朝礼は終わった







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