小説

□誓い
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「………ふぅ…」



オシリス・レッド寮の側の建物



明日香はこの三年間で起こった出来事を思い返していた



「いろいろ…あったわね…」



三年前に十代と出会い



兄の吹雪の捜索の事



セブンスターズ、三幻魔との激闘の事



光の結社の事



異次元世界へ行った事



ミスターT、ダークネスの事



十代とのペアデュエルの事




そして



「………留学、か…」



十代とのペアデュエルを通して決意した自分の進路



居場所の良いアカデミアからの独立を選択した



もう心に迷いなどない



ただ一つの心残りを除いて





「……ん?、明日香?」



遊城十代



明日香を変えてくれた少年




「十代。あなたのおかげで私、迷いがふっ切れたの。ありがとう」



突然お礼を言われた当の十代はわけがわからないといった顔をしている



「あぁごめんなさい!こっちの話」



「……?、そっか?」



明日香は右に見える港を見つめる




始めは単に面白い奴だと思っていた



それが十代と関わる度、より密接な関係になる度に変わっていった



兄の所持品を探してくれた時



異世界で命懸けのデュエルをしてくれた時



自分を賭けて勝負してくれた時もあった




明日香の心に彼が居着くには十分過ぎる程の時間



そして卒業間近の今



平和な時を刻んでいる今こそ、自分の心に存在している最も届けたい気持ちを伝える時だ





「……あ、あのね?、十代……私…十代の事…////」



「…………」




「で…出会えて良かったと思ってる!!////」






伝えられなかった



卒業まではまだ時間がある



そういう甘えが、明日香の気持ちにブレーキをかけてしまったのだ



途端に後悔と自責の念が明日香の心を支配する




「これからも、いいライバルでいましょう!」




強がりで言った言葉と差し出した右手



十代がこの手を取った瞬間、想いは断ち切られる



ある意味では楽になれるのかも知れない



明日香の中では、握って欲しいという解放を望む心と、握らないで欲しいという純粋な執着心が渦巻いていた













「……いいライバル、か…」




明日香の手を握らず、十代は呟いた






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