小説
□愛してるのは……
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『今度の日曜日、私とデートしなさい』
この間そう雫から言われ、ナツルは以前待ち合わせをした広場の噴水のところに座り、待っていた
「……早く来過ぎたかな…」
約束の時間までまだ20分もある
初デートの時のような勘違いはしていない
今度こそナツルの頭には純粋なデートという心構えがあった
「……なんか緊張してきたかも…」
まだ午前中の広場
人だかりは疎らで少ない
自分一人だけがこの広場にいるような淋しさとも思える感覚がナツルにはあった
すると
「前回同様、どうやらデートに対しての常識ぐらいは心得ているみたいね」
広場に凛とした声が響いた
ナツルが背後を振り返るとそこには黒のシックなコーディネートをした服装の雫がいた
「やっと来たか……」
ナツルは腰をあげて雫を見た
「こっちはいろいろと準備があるの。これでも急いだほうなのよ?」
たしかに雫の肩にはそこそこ大きなショルダーバッグを担いでいた
「まぁ……早く来過ぎた俺も俺だし…お互い様か…」
そのナツルの言葉を聞いた途端、雫はナツルにずいっと迫り寄り
「どうして早く来過ぎたの?」
「………どうしてって…」
雫の問い掛けにナツルは目を逸らしながら思考を巡らせる
「そんなの……わかんねぇよ………気付いたら、この時間だったんだよ…」
「無意識的に私に会いたがっていたのかしら?」
「狽チ!!////しっ、知るか!!!////」
そのナツルの照れた表情に雫はくすりと微笑んだ
「それじゃあ、行きましょうか」
「ん、あぁ……」
ナツルはなにやら悩んでいるような表情をした
そして決心した事は
「…………ほらよ」
ナツルは雫に手を差し出した
雫はそれを不思議そうな目で見ている
「デートなら、手ぐらい繋ぐんだろ?////」
「クス……そうね」
雫はナツルの手を握る
「………っ/////」
「自分から誘ったのに何照れてるの?」
「蝿痰チ…!!///いっ、行くぞ!!!/////」
「ふふふ……ええ」
そういつもと変わらぬ表情で答えた雫だが、ナツルが前を向いて歩き出した隣でほんのり頬を赤らめていた
そして二人のデートが始まった……
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