小説

□トラウマからの解放
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戦場ヶ原とキスを交わしたあの夜




あれから僕らの間に進展はない




だけど、それでいい




そんなに急く必要はない




ストイックな関係で、僕らはいい





あいつが自分の手でトラウマを断ち切る決意をしたのなら、僕はそれを後押しするだけだ
































「僕の家で勉強?」

放課後

僕の恋人、戦場ヶ原ひたぎと共に下校していたところ、彼女からそんな提案があった

「ええ、そうよ」

自転車を押しながら歩く僕の隣に並んで、真っすぐに前を見ながら戦場ヶ原はいつもの調子で言った

「なんでまた急に?」

「あら、愛しの彼女が彼氏の家に行く事がそんなにおかしいかしら?」

これもまたいつもの挑発的な声音と表情で僕を見てきた

「いや……別におかしくはないけどさ……」

「理由が知りたいのね、わかったわ。微生物的知能の阿良々木君には考察力がないのをすっかり忘れてしまっていたわ。私としたことが、あるまじき失態ね」

「博ゥ分を卑下するほど僕を過小評価するのはやめてくれ!!!!!」

この毒舌暴言もいつも通り

「私が住まわせてもらっている部屋の隣の住人が改築工事を始めたのよ。夜遅くまで凄まじい機械音が轟くから勉強どころじゃないわ。そう判断して今日は阿良々木君の家で勉強することにしたのよ」

「へぇ、そうなのか。大変なんだな」

すると戦場ヶ原の目が鋭くなった

「なによその他人事のような反応態度は。自分の恋人の優し過ぎる配慮に少しは感謝をしたらどう?」

「感謝もなにも、僕はその話を今知ったんだぜ?あの時点でありがとうと言える人間がいたら見てみたいよ」

「だから貴方は馬馬馬馬馬鹿なのよ」

「狽ヌんだけ馬付けてんだ!!!!」

「5個よ」

「………すごく冷静に僕のツッコミを処理したな」

このような言葉の掛け合いは日常茶飯事

戦場ヶ原と恋人関係になってからは寧ろこのやり取りが楽しくもある

「とにかく、わかったよ。今日は僕の家で勉強だな?」

「さっきからそう言っているじゃない」

すると戦場ヶ原は少し言いにくそうに

「…………それと、一つ気掛かりな事があるのだけれど」

「ん?なんだ?」

戦場ヶ原は足を止めて僕を見ていた

僕も足を止めて見返す

「阿良々木君の……ご家族の事よ」

「……?それがどうした?」

「私はほとんど一人暮らしのようなものだから、阿良々木君を家に招こうと気にしなかったけれど、私が阿良々木君の家に行く事によってご家族の方に迷惑をかけてしまわないかしら?」

「……珍しく殊勝な態度だな」

戦場ヶ原は考えたら一直線

そうなると他人の考えや気持ちなどを全くもってスルーする人間なのだが、こういった態度は本当に珍しい

「私が将来ご厄介になるお宅よ。私の事を良い印象で記憶に残してもらわないと困るじゃない」

「………っ////」

…………既に確定しているのか…っ…!!!

相変わらずとんでもない事をサラっと口にする戦場ヶ原に、僕は鼓動を速める

それはともかく、肝心の戦場ヶ原の心配はどうやら杞憂に終わりそうだ

「心配ないよ。母親は町内会の旅行で今日一日いないし、妹達は宿泊学習で帰らないからな」

「…………そう」

僕らは再び歩き出す

そして気付けば戦場ヶ原と僕の家までの分かれ道に来ていた

「じゃあ、家に帰ったら支度をしてすぐに阿良々木君の家に向かうわね」

「あぁ、わかった」

僕がそう返事をすると戦場ヶ原は颯爽と歩き去っていった

自転車の向きを変え僕も歩き出す

「僕の家で勉強……か……」

僕の家に女の子が入るのは、神原、千石に次いで三人目か……………ん……?

「父さんと母さん、火憐ちゃんと月火ちゃんがいないって事は………」

……………………



重大な事に気が付いてしまった




僕一人


そこに戦場ヶ原が尋ねてくる



イコール



「(薄lと戦場ヶ原の二人っきりぃぃぃ!!!?/////)」









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