【ただいま】

□竹と願い事の中
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織り姫と彦星?
へェ、そんなロミジュリみたいな話があるのか。


【ただいま】


7月7日です。
どうやら今日は七夕っつーイベントがあるらしい。
短冊に願い事を書いて、えっと…なんだっけ。

今はロタロー達が短冊に色々と願い事を書いている。
俺はこの前の傷も治ってきて、少しなら歩く事もできるくらいには回復した。


「リキッドはなんて書いてるんだー?」
「のぞいちゃえーv」


その短冊には、キャベツの安売りとか洗剤の20%増量とか。
それはもう願い事っつーかアレだよ。
バーゲンセールに行けよ。


「願うよりスーパーの特売日に行けよ」
「だーから勝手に見んなってばッツ!」


次にロタローが手にした短冊には、「九九の六の段でつかえませんよーに」と書かれていた。


「燃えろ燃えろー!」
「わーうわーう」
「よかったねv これで人生の汚点は消えたよ」
『あったけーな』
「ギャーーっつ!願う事すら許されないッツ!」


短冊はキレイに燃やされた。
それはそれは、キレイにまる焦げ。


「チャッピーは何をお願いするのー?」
「わうーv わうーv」
「おお、素直」
「アレクは?」
『ん?そうだな…。飛行機欲しい空飛びたい飛行機飛行機飛行機……』
「飛行機ばっかりだね」


ああ、飛行機の事しか頭にねーのな、俺。
もう一つあるんだけど、これはなんか恥ずかしいから見られたくねぇや。


「チクショーっ、ロタローのも見せてみやがれッツ」
「えーッ!やめてよぉ」


リキッドがロタローの短冊を奪う。
「ずっとパプワくん達となかよしでいられますよーに」
それがロタローの願いだった。


「…………なんでこんな投げやりなの?」
「だってついでだもん」
「書かんでいーわい」


もう一つには「家政婦はずっと家政婦でいいよ…」と書いてあったらしい。
とりあえず、俺らは短冊にたくさん願い事を書いて、ある場所へ向かった。
俺は怪我が心配だからついて来るなって言われたけど、留守番はつまんねーからついて行った。


「ふぇ〜〜、山ひとつ越えちゃったよぉ……。まだ着かないの?」
「ここまで来ればあと一息だぞー!ちょっと下の方を見てみろ」


前方にバベルの塔ならぬバベルの竹が見えるのは俺だけか?
バベってるぞあの竹。


「何コレそびえてるよーッ!!!」
「第2のパプワ島七夕名物“ジャイアントイッポンダケ”だ」


ふもとまで行くと、みんながいた。
ナカムラくん達をはじめ、ナマモノはすでに大集合だ。


「わあ、みんな集まってるねー」
「パプワ島中の願いを書いた短冊は全てこの竹に吊すからなー」
『デッケー竹だなぁ』
「短冊は高い所に飾るほど願いがよく叶うんだぞ!」
「へぇー、そーなんだ!」


なるほどー。
…登るのか……。


『「「じゃ、よろしくね家政婦」」』
「わあ、やっぱり僕が登るんだね」


うん、ごめん。


「パプワが登れよッツ。オメーが一番体力あんだから!!」
「何を言う!アッサリと登ってしまっては願掛けのありがたみがないだろう」
「ホラぁ、早く登る準備して」
「クソ〜〜……」


そこへ、エグチくんとナカムラくんが短冊を持ってやって来た。
リキッドに短冊を運んで欲しいのらしい。
オショウダニとエトセトラも現れて、山ほどの短冊を置いて行った。
トシ達も頼みに来たのは、近藤さんの腰の具合とトシの高所恐怖症のためだそうで。


「じゃあそこの健康そーなソージくんに頼めば――…」
「やだなぁーv なんで僕が親父ふたりの願い事を叶えてあげなきゃいけないんですか。まっぴらごめん」


ソージはハニースマイルではっきりとそう言った。
恐ろしいわあいつ。
リキッドは仕方なしにトシ達の短冊も受け取った。


「ヒューヒューv やッさしいねー、リキッドちゃん」


まぁ、トシ達がいるっつー事はこいつらも登場するわけだ。
ハーレム達はリキッドに脱ぎ捨てたクツ下と一緒に短冊を渡した。


「お、アレク。お前もう大丈夫なのか」
『まーな!』
「つらくなったらいつでも俺の胸に飛び込んできてねーv」
『黙れロッド。腕を広げるな』


ナイフを投げるフリをする。
持って来てないから枝でフリをするだけ。
なんてやってる間にリキッドはもう竹に登り始めた。

俺は少し疲れたので、ちょうどそこにあった切り株の上に座った。
やっぱりまだ山ひとつは越えられねーか…。


「大丈夫か?」


マーカーが声をかけて来た。
珍しいな。


『ん?おう!大丈夫に決まってんだろ。俺は完全ムテキだからなッ』
「…完全無欠な」
『………そッ、そうとも言う…よな』


くそッ、笑われた!
恥ずかしいぞ22歳ッ!


「隊長でも呼ぼうか?」
『いや、いいよ。…って、何でハーレム?』
「さてな」
『え、何その笑み。怖いからやめようよ、そういうの』


マーカーだとさらに怖いんだけど。
つか、ホントまじで何でハーレムなんだ?


「フ…気にするな」
『だからその笑みはなんだ』


今日のマーカーはよくわからんな。
いい事でもあったのかな…。


『…ま、いーか』
「何がだよ?」
『あれ、ハーレム。どうした?』
「あ?あー…お前が無理してんじゃねーかと思って来てやったんだよ」
『ああ、俺なら大丈夫だぜ』
「ムテキだからか?」
『あッツ!それマーカーから聞いたんだろッ』


くっそ!マーカーめッ!
さっきはいじりネタができたから笑ってたのか!


「へッ、無欠だか無敵だか知らねーけど、あんま無理すんじゃねーぞ」


頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
な、なんか、何かがおかしい。


『わ、わかってるっつのッ。撫でるなよ』
「ちょうどいい高さに頭があるもんでな」


たしかに、俺は座ってるから子供と大人くらいの身長差だろうな!


『そういや、リキッドは大丈夫かな』
「あいつなら大丈夫だろ」
『ん、そうだな』

「………」
『………』


沈黙が流れる。
気まずさは不思議となかった。
俺が何か言おうと口を開いた時、轟音が鼓膜を震わせた。

空に飛空艦が現れた。
ガンマ団のシンボルを連れて。




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