【ただいま】
□目覚めの中
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白濁とした景色……。
《 》
俺に似た女性が、笑顔で誰かと話している。
また、この夢だ。
【ただいま】
目が覚める。
視界に映るのはいつもの天井で、周りには、パプワ達がいた。
ハーレム達やトシ達…ナマモノ達まで。
「アレクっつ!!!」
『お…はよ……。ってて…』
体を起こそうとして身じろぐ。
腹が痛い。
「む、無理すんなよ。傷がまだ…」
『大丈夫…だって。……?あれ、俺の服…は……』
肘で体を支えて上体を起こすと、俺の体には丁寧に包帯が巻いてあって、服は着ていなかった。
「あ…それは…血がすげぇ付いてて……ッ。包帯も俺らじゃなくてウマ子が…だなッ」
リキッドが慌てた様子でそう言った。
…別に気にしねぇんだけど。
ただ、服はどこかなって思っただけだし…。
『その、ウマ子……は…?』
「お前が起きてから元気になる様にって一狩りしに行った」
『そ…か』
なんか…簡単に想像できる。
優しい女子だなぁ…。
「そんな事より、アレク。説明してもらおうか」
マーカーがそう言うと、みんなの表情が真剣になった。
『……知る、かよ……。飛行機…キレイに……してて……。そしたら…誰か来て……』
くそ、俺の飛行機……見つけたら全額弁償させてやる。
「その人の事、見てないの?」
『ああ…ちょうど、飛行機の脚で……隠れてた』
すぐに飛行機の下から出てりゃ、飛行機も壊されずにすんだのに…。
くっそぉ。
「男装してた理由は何だ?」
あ、そっちも説明するのか。
てっきり、怪我した経緯だけかと思った。
『……』
ハーレムを見遣ると、話せよ、と目で訴えられる。
お前が言ってくれた方が、俺の体力的な問題で嬉しいんだけどな。
『……軍人…だ、からな。俺は……』
「それだけか」
『ああ…。それ…だけだ』
ちみっ子やナマモノ達にはもう大丈夫だと告げ、外で遊ぶ様に言う。
みんな、俺に一言か二言ばかり言ってからパプワハウスを後にする。
「無理しないでね」
「うむ、無理は禁物だぞ」
『おう…ありがとな』
最後にパプワとロタローが出て、周りには大人しかいなくなった。
俺は痛みを訴える腹を意識しない様に心がけて、ゆっくりと息を吐きながら、枕に頭を預けた。
疲れた。
『俺の…いる国は……まだ…治安が……悪いんだ…』
その話は終わったのかと思っていたみんなの視線が集まる。
なんか、ごめん。
『特に女は…毎日の様に…女衒に、追われてる。軍でも……手が…つけられない…くらい……人が………。俺…は、追われるの嫌だから…』
これはハーレムにも話してなかったかな…。
あいつにはどこまで話したっけ……。
『あそこは…俺が……変えてやるって……決めて……軍人になったんだ………』
やべ、目…霞んできた……。
『少し…でも、ナメられない様に……って、男のフリ…してた』
「……そうか」
『……悪かったな、ずっと隠してて…』
眠いから、寝る。
そう言って、目を瞑る。
疲労感からか、睡魔はすぐに訪れた。
《 》
あ…また……夢だ。
俺に似た女の人がいる。
《 サ ドラ》
…?
何だ、聞こえそうだ…。
《――アレキサンドラ》
『………』
目を開いてしまった。
すでに太陽は沈んでいて、外は暗い。
室内も暗く、パプワ達はもう寝ていた。
『……アレキサンドラ……?』
夢で聞こえた名に、首を傾げた。
聞いた事のない名前だ。
あの女の人の名前か……?
でも、何で知らない名前が……しかも、何で俺の夢に?
『………わけ…わかんね…』
思わず、そう呟いた。
傷が熱いのも、忘れて。