【ただいま】

□父の日の中
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そういや、この日はいつも父さんと一緒にいたな…。


【ただいま】


ちみっ子2人の体重×重力=衝撃 が腹にかかり、目が覚めた。
ちなみに、午前2時。
リキッドはまだ起きていない。


『う〜……ど、どうした?』
「手伝ってv」
『何を?』
「車作りだぞ」


…………。


『夢か』
「違うぞー」
「現実だから早く起きてよ〜」


と2人は俺を外に連れ出した。
森を少し進むと、そこには…。


『ハリボテ……』


決してハ○ポタではない。
響きは確かに似てるけど、見た目は全く違う。


「エンジンが欲しいんだけど…」
『飛行機のエンジンはダメだからなッ!』
「分かってるよ。だから捕まえに行かなきゃって事」


捕まえに…?

そう疑問に思いながら、俺はパプワ達について行く。


『無理だな』


目の前にいるのは、ネズミだ。
可愛いげな顔をしているが、ちょっと肉片を投げると、尋常じゃない勢いでかぶりついた。
ぶっちゃけ、超怖ぇ…。


「「頑張って」」
『どう捕まえろってんだッ』


噛まれるッ。
絶対噛まれるッツ!

袋を渡されたからには、どうやらやらなければならないらしい。
仕方ない……。


『パプワ様ッツ』
「うわー、アレクの土下座なんて初めて見るよ」
「うむ。仕方ないな」


流石パプワ、太っ腹!
あとでリキッドが作ったおやつをわけてあげるからな!

と言う事で、ネズミを捕まえた俺達は、一旦ハリボテのところまで戻った。
車体の下にネズミを仕込み、車は完成し、リキッドが起きる前に俺らは毛布の中に入った。

しばらくすると、リキッドが起きた。
リキッドはいつも通りにエプロンを着こなして鼻歌(ミッ○ーのテーマ)を歌いながら野菜を切るはずなのだが………。


「フンフフフンフン〜…♪」
『ぶふ!!…くくッ……』


パレードかよ…ッツ。
ミッ○ーのテーマじゃなくてパレードかよッ。


「……おい」
『くッ…ふへへ…』
「アレクっ!起きてんならさっさと起きろッツ」


毛布を奪われ、俺はリキッドを見上げる。
フリルがフリフリなエプロンを着た大の大人(20歳)が俺を見下ろしている。


『こ、こっち見んなッ…笑える』
「何がッツ?」
『フっ、フリフリル……』
「もう勝手に笑い死ね」
『見捨てんなよー…ぷひぇっ』
「ああもう」


リキッドは俺を見捨てて、みそ汁へと顔を向けてしまった。
なんとなく淋しくなった俺は笑うのを止めて、リキッドの腕前を勝手に拝見させて貰う事にした。


『あ〜さのっメシメシメッシはサッカーの神なのさ〜ん♪』
「訳わからん歌を歌うな」
『朝メッシの歌。今考えた』
「ああもう」


二度目のスルーだ。
仕方なく俺は即興曲(カッコよく言ってみた)を歌い続ける事にした。


『フリルがキラめく家政婦登場♪』
「俺を入れるな」
『そいつは悪の組織の男♪朝メシに〜ピーマン投入ッツ♪正義のヒーローそこに参上〜♪悪の組織をぶっ潰し〜♪世界の〜平和を〜守るんだ〜ぜ〜い♪』


歌い終えてしまい、俺はまた淋しくなっちゃったわけだが。


『何か手伝おうか?』
「……。じゃあ、外で洗濯物でも洗ってきてくれよ」


とリキッドが指差した先には山のように積まれた洗濯物。


『イエッサ〜ぁあ♪』
「歌うなって」


俺は洗濯物を抱え込んで外に出た。
洗濯板とか昭和かよ、というツッコミが浮かんだが、もう今更なのでそれは言わない事にした。


『あ、そういやあ、リキッドがいなくならなきゃ“準備”ができねーじゃんか』


大丈夫かな。
と思いながら、竿に洗濯物をかける。
俺が家に入ろうとすると、別方向からリキッドが来た。


『あれ?リキッドお前、中にいたんじゃないのか?』
「二人に追い出されたんだよ。だから薪拾いに行ってきた」
『へェ』


準備できたかな。
と思った俺は、一応リキッドを先に家に入れた。

中は――…


「お帰りパパーv」


菊の花、棺、線香…そしてリキッドの遺影。
素晴らしい装飾だ。


「これは無邪気な子供の残酷なイタズラですか…ぶっちゃけイジメ?」
「ハッハッハ。年を取るとひがみっぽくなっていかんな。これは目上の者を敬う儀式だろ」
『マジっ!?』
「いえ…かなり目上の人の見送りです」


リキッドは言葉の最後を妙に強調してパプワにツッコミを入れた。


「つーかアレクは信じんじゃねえッ。お前らもいーから早くこんな不吉なモノは片付けなさい」


強い口調でリキッドがそう言うと、ロタローとチャッピーが泣き出してしまった。


『わっりーッ!』
「うるせぇッ。ほッ…ホラ、そんなに泣くなよ〜。俺、普段お祝いなんてされたことねーからさぁ。ついテレちまって…」


泣くロタローを宥めると、ロタローは泣き止み、プレゼントを差し出した。
テヅカくんとタケウチくんの特製ドリンクが大量に詰まった箱だ。


「そんな不吉な湯気が立ってるモノは飲めませんッ」
「チェッ!ノリが悪いなぁ、38万円も払ったのに!!」
「オマエのヘソクリからな!」
「きゃーーっ!コツコツためてる老後の積み立て」


他にもいろいろなグッズを買ったのらしいが、それは全部リキッドの金だ。
しかも、必要ないんじゃね?って感じのグッズばかりだ。


「まあ、肉体派のパパにはもっとアクティブなプレゼントじゃないとな」
「次いってみよーv」
「え…?まだまだ続くの、このイジメ」
『付き合ってやれよ、楽しそうだし。おれはここで留守番してっから』
「一緒に行かねぇのかよ」
『俺は部屋の掃除とか片付けとかしといてやるよ』
「そうか、悪いな。じゃあ、留守番頼むぜ」
『おう、任せろ』


ほんとは車を見に行きてぇけど…。
そう思いながら、主夫のアイデア商品や葬式セットを片付け始めた。


『父の日か……。父さん、今何してるかな』


リキッドの遺影を片付けながら、父さん達の事を思い出した。
俺がいなくても別に大丈夫だろうけど、ちょっと心配だな。
飛行機で飛んでって、また島に帰るって事ができればいいのにな。


『…さぁて、リキッド達が帰ってくる前にさっさと片付けよっと』


遺影を箱に投げ入れ、菊の花で埋もれさせる。
ある程度片付くと、リキッドがボロボロになって帰ってきた。


『お帰り。楽しかったか?』
「いやいや、父の日にとんだ災難だったな!」
「ホントついてない男だね」
「じゃかぁしいッツ!!ハァ〜、まぁだ体中ズキズキするぜぇ」


待ってましたと言わんばかりに、玄関に人影が現れた。


「それならおまかせあれ!」
「父の日の素敵なゲストをお呼びしてるよ」
「中国四千年の歴史、鍼の名人だぞ!」
「これで日頃の疲れもフッ飛ぶねーv」
『マーカー…お前、何してんだ』
「バイトだ」


なるほど。


「ヒィイイイ〜殺られるぅ!!!」


リキッドが逃げ出そうとすると、マーカーが鍼で刺した。
そしてリキッドは獅子舞ハウスへと連れて行かれたのだった。





「遅いねー」
「治療が長引いているようだな」
『そろそろ迎えに行ってこよっかな』


ちょっと心配だし。
つー事で、獅子舞ハウスに行く。


『よっすー』
「あ、アレクじゃんv」
「どうした?」
『うちの家政婦のお迎えにな。どこにいるんだ?』
「そこ」
『……あー、うん』


ダンボールの中で引きこもってるね。


『腹へりのちみっ子が待ってっから、こいつ返してもらうな』


箱ごと台車に乗せて、帰宅した。


「まあ野良犬に噛まれたと思って」
「近寄らないで悪魔ッ子!」


すっかり引きこもったリキッドにロタローが最後のプレゼントをした。
いろいろな家事が書いてある肩たたき券だ。


「料理、洗濯、掃除――…ずいぶん色々としてくれるんだなぁ…」
「何言ってんだ、全部オマエがやるんだぞ!」
「有効期限は死ぬまでです」


それを聞くと、リキッドはそれを全部破り捨てた。


「普段と変わんねーじゃんかッ!全然プレゼントじゃねーッツ」
『なーに言ってんだよ、普通が一番じゃねぇか』
「そうそう。それより今日はパパにいっぱいご奉仕したからお腹ペコペコだよ」
「めーしメシ!」
「……………へいヘ〜〜イ」





「やっぱりパパの料理は最高だな!」
『さすがだよな』
「今日はまだ後数時間あるけど、何かして欲しいー?」
「………ケッ!…………子供は素直に甘えてくれんのが一番の親孝行だ」

「パパ、デザート!」
「わうー!」
「今日はブドウのお菓子がいいーv」
「へーいヘイ」




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