【ただいま】

□男の中
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酔いってのは醒めた時が一番恐ろしい。
だって、何したか思い出しちゃうじゃん。



【ただいま】



夜中、俺はパプワに起こされた。
ちみっ子達は金太郎の前かけに着替えていた。

俺は眠すぎて視界に幕を下ろしそうだ。
いや、意味不明か…。
とりあえず、海岸へつれられた。


『あれ?どうしたんだみんな』


なぜ甲冑姿。
なんか俺だけ浮いてるじゃん。


「アレクも甲冑を着んか」
『いやいや。甲冑なんて持ってねーよ』
「そう思って、通販で買ってやったぞ」
『うわー、見事な甲冑だな』


立派すぎる。いや、マジで。
これならコロッセオ殴り込みに行っても大丈夫そうだ。
……いや、行かないけどさ。


『重ッツ』
「当り前だぞ」
『いや、マジで重すぎるだろ…』


鎧とか着けた事ねーよ。
何だこの重さ。


『……で、何であのオッサンどもは普通に着ちゃってんの。しかも軽そうに』
「慣れだろうナ」
『腰でも痛めちまえばいいんだ』
「なんか言ったかぁ?アレク」
『うおッ!何でもねーよ!!』


いつの間にか後ろに来ていたハーレムに俺はびっくりして飛び退いた。


「アレクは甲冑も似合うな」
『そうか?なはははぁ〜』
「細いがな」
『マーカーは一言多いんだよ』


細くたっていいじゃないか。


「バニーの服も似合うんじゃねぇか?」
『…おまえ馬鹿だろ』


ハーレムの言葉がありえなさすぎて、呆れてため息をつく。


「アレクが着たら可愛いと思うけどな。俺は」
『知ってたか?研ぎたてのナイフはちょっと当てるだけで斬れるんだぜ?』


ナイフでロッドの顔をたたく。
軽く頬が斬れている事は無視する。


「アレクが怖いよ〜」
『え?いやだなァ、冗談だよジョーダン』
「冗談で人の頬を斬『え?何か言ったか?』」


なんて話している内に、ロタローとパプワは、試練(?)に行ってしまった。




















ロタローがオットコ玉を持って帰って来た時、俺はすでに酔っ払いになっていた。


「アレク、大丈夫?」
『らいりょーぶらあー』
「呂律が回ってないよー」
『んな事ねえよ〜』


俺はロタローの頭をなでた。
………ここまではおぼえてる。

それから、何したっけ?





















『う〜v 美味いッv』


アレクはハーレムの酒を奪い、ラッパ飲みした。
ちみっ子達は寝る時間だと家に帰されたばかりだった。


「飲みすぎだぞアレク。控えろよ」
『バカヤローッ!諦めたらそこで試合終了なんだぞ!』
「意味わかんねーよ」
『酒の飲めないリキッドになんか言われたくねーよー。逆プリン頭めッツ』


アレクはそう言って、リキッドの頭を掻き回したり叩いたりした。


「バッ…やめろアレク!!」
『年上のお兄さんに反抗するからだぞv』

「かなり酔ってるね〜。アレク」
「ああ」
「ここまで酔っているのは初めて見るな」
「んな呑気な事言ってねーで助けろッツ」


リキッドはのしかかるアレクを退けようとするが、アレクの力の方が勝っていて、動かせないでいた。


「おら」


ヒョイ、とハーレムがアレクの脇を持ってリキッドから離した。


「あ、ありがとうございます…」
『ぬあ?ハーメル?』
「飲みすぎだ。つーか誰だよハーメルって」
『うるせーやい。酒よこせ』
「「「「渡さないで」」」」


これ以上飲まれたら何されるかわかったもんじゃないと思い、4人はキレイにハモった。


『……』
「おい、アレク?」


アレクの顔を覗き込む。
顔は赤く、涙目になってトロンとしている瞳は焦点が合っていないが、ハーレムを見つめている。
思わず、ハーレムはアレクから目を逸らした。


『…眠い』


そう言うと、そのまま目を閉じてしまった。
倒れる前にハーレムがアレクの体を支えた。

しばらくして宴会もお開きとなり、ハーレムはアレクを背負って、パプワハウスへ連れて行く。
ずっと、ハーレムの腕を離さなかったのだ。


「お〜い、アレク。起きろ」
『ん〜…いやあだ』
「微妙にエロい声出してんじゃねぇよ」


悪態をつきながらアレクを送って行く。
アレクが突然ある方向に指をさしたので、ハーレムはしぶしぶそこに行った。
そこは、湖だった。


「……ここに何か用でもあんのか?」


返事はない。


「………寝てんのかよ」


耳元で聞こえる、整った寝息。
ため息をつき、アレクを湖に投げた。


『うぶあッツ!?』
「起きたかよ」
『ハ、ハーレムっ!?』


突然湖の中に投げ入れられ、完全に酔いも目も覚めたらしい。


『何すんだッ!』
「ここ指さしたくせに寝てやがったから、起こしてやったんだろ」
『普通に起こせッ。溺れるとこだっただろ!』


湖から上がり、濡れた服の裾を絞る。


『ぶえっくしょいッ』
「なんつうくしゃみすんだよ」
『人の生理現象に文句つけんな』


鼻水をすすり、ハーレムを睨みながら、服から滴り落ちる水を絞る。
その間、ハーレムはずっとアレクの体を見つめていた。


『………何見てんだよ』


視線に気がついたのか、ハーレムの方に顔を向けていた。


「思ったより胸でけぇんだな」
『……………は?』






















湖に投げとばされて酔いが覚め、何か視線を感じたからハーレムを見た。
そんで、「何見てんだよ」と聞いた。
で、返された言葉が、何でそれ?


『え?な、何で……は?え?』
「知ってんのは俺だけだ」
『いや、そこ問題じゃなくて』


何で知ってるんだよって事だよ。


「触っ『やっぱりかてめぇッツ!!!』」


腰に常時身につけているナイフを投げつければ、見事にキャッチしやがった。
避けるな。そして逝け。


「減るもんじゃねえだろ」
『減る減らないの問題じゃねえッ。触るなッ!!』
「無防備な奴が悪い」
『セクハラオヤジみてぇな言い訳すな!!』


2本目のナイフを投げる。
それもキャッチしやがった。


『あ〜、くそッ』


沸き上がる屈辱感と恥ずかしさで顔が熱い。
女だってバレてた……。


「……何で隠してたんだ」
『…俺は軍人だッ。女であってたまるか…』


髪の毛の水分を絞りとり、ため息をつく。


「俺らに隠す理由はねぇだろ」
『…俺が女だと知られれば、必ず敵が攻めてくる。お前らはまだ…俺らとは敵同士だ…』


と言った後、後悔した。
仲良くしてた奴に敵って…傷つけたかな…?


『…ま、確かに隠してたのは悪いと思うよ。でもさ、今更言ったってなんか気まずいだろ?』


笑顔でハーレムに問い掛ける。
ハーレムは俺の顔を見たまま、何も返してくれなかった。


『ハーレム?』
「…明るくなってきやがったな」


と、言われて、空を見上げる。
東の空は白みがかっていて、水平線からは陽が昇り始めていた。


『あ〜……』


朝になってしまったようだ。
ハーレムは目を細めて、陽を見つめていた。


『…』


それが、すごく綺麗だった
まるで絵画の様だと、そう思った。
ハーレムの澄んだ青い瞳と、雄々しくなびく金色の髪に陽の光が反射して、眩しい。


「何だよ?」
『…何でもねぇよ、帰ろうぜ』


何故か、俺の心臓は激しく脈を打っていた。




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