【ただいま】

□手紙の中
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チャッピーのおつかい。
帰りはとても不思議な風船で飛んで来た。
念じたところへ行ける、不思議な風船。



【ただいま】



『高くねぇか?もうちょっと安くしてよ』
「くぃ〜ん」


その風船が欲しくて、タケウチくんにねだる俺。


『俺の財布の中身、メチャクチャ少ないんだよ…』


一つ30万円っておい。
立派な詐欺だよ!
ちゃわゆいナマモノが詐欺なんてしちゃダメだろ!


『え〜…。5万かァ…』


何とか値切ってやったぜ。
5万でも高いが…30万が5万になれば上等だ。


『ほら、5万』
「くぃ〜ん」
『変な事に使ったらダメだぞ』


買った風船を持って、パプワに帰った。


「あれ?それってチャッピーが持ってきたやつじゃねえか?」
『ん。念じればどこにでも行けるんだろ?』
「ああ。そうだけど……」


リキッドはシュンと肩をすぼめた。


『どうした?』
「アレクは……それで帰るのか?」


あ、そうか…これで帰れるって事もできるかもな。
できれば帰りたいなんて思うけど、帰りたくないって気持ちもあった。


『…飛行機も一緒に帰りてぇからな〜。無理だな。残念だろ』
「ま、全くだぜッ」


リキッドはそう言って俺の頭に手を置いて、ぐしゃぐしゃとする。
俺は笑いながらその手を払い、髪の毛を手ぐしで整えた。


『…たださ、連絡するものが何も使えないから、これ、届けようと思って』
「手紙?」
『ああ。無事に届くかは保障されてねえけどさ…』


風船の紐に、昨日の夜に書いた手紙をくくりつけて、軍の基地に念じた。

基地、基地……元帥か父さんが拾ってくれると嬉しいな。
なんて念じて、風船から手を放すと、風船は青く澄んだ空に消えた。


「届くといいな、あれ」
『届いてくれなきゃ困るよ』






















風船は目的地に届いていた。
そこは、基地の門前。
門番がしおれた風船と手紙を拾い上げ、元帥のもとへと届けた。


「行方不明のミチェルディード中将から手紙が?」


元帥は書類から目を離して、門番を見遣った。


「封筒にしっかりと名前が…」
「しかし、彼は大渦に飛行機ごと突っ込んだと聞いたが…?」
「私もそのように聞きましたが、筆跡が本人と一致しますし…」


その封筒を開け、文章を読んだ。
そこには、今の近況と自分の無事が書かれていた。


「………」
「なんと書いてありますか?」
「当分は帰れない。だが、無事に生きている…だそうだ」
「そうですか…」


そこへ一人の男性がバン!と扉を勢い良く開いて現れた。


「ミチェルディード中将から手紙がきたというのは本当ですか!彼は…アレクは無事なんですか!!?」

「ミチェルディード大将…」
「落ち着け。彼は無事だ」
「……よかったぁあ〜…」


その男は、地面にへたり込んだ。
アレクの父親だろう、名前がアレクと一緒だった。


「まったく…。……?待て、君は遠征に行ってたんじゃないのか!?」
「ミチェルディード中将から手紙があったと無線で聞きまして、早急に仕事を終わらせてきました」
「………。君のような部下を持つとつらいよ」


元帥は手紙を渡す。
男はそれを受取って、読んだ。






















『ふあぁ…ぐへっしょいッ!ゲホッゲホッおえっ』
「あくびしながらクシャミすんなよ…」
「しかも咽たね」
『きっとどっかの誰かが俺の噂をしてんだよ』


間の悪い奴め。


「で、手紙はなんて書いたの?」
『内緒だ』
「教えてよ〜。いいじゃん、それくらい」
『そーゆーのはプライベートの侵害っていうんだぞ』
「プライバシーだぞ」


はっきりツッコミされちゃったよ。


『子供に指摘されるとは……一生の不覚…ガク』
「サムライの格好して言うんじゃねえよ」
『こーゆー服装した方が、なんかきまった感があるだろうがよ』
「効果音を口で言う時点でアホみたいだよ」






















“勝手な行動をしてしまい、申し訳ありませんでした。隊員らは無事に戻れたでしょうか。俺は無事です。当分帰れそうにありませんが、必ず帰ります。
追伸、父には無事だと何度も言って下さい”





「…そうか。無事で何よりだ」
「場所を書いていないのが気になるが…」
「気長に待ちましょう。帰ると言うのなら、必ず帰ってきますかな」
「…君の親バカぶりには、ホントに呆れる」
「かわいい息子ですから」


そう言って、ほほ笑んだ。


「最近、私の息子が冷たいんだが、どうしたらいいと思う?」
「…気長に待てばいいのでは?」




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