【ただいま】

□女の愛の中
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女の愛ほど重たいものはない。
そう感じた今日だった。



【ただいま】



ある日の夜、パプワハウスの中で演歌アダルトメドレーが白熱していた。
今はロタローが唄っている。


「やっぱり演歌は最高だね」
「歌詞に込められた想いが伝わって来るな」
『おーし!次は俺が歌うわ』
「おいおい、もう寝る時間だぞー」
「えー!もっと歌いたーい!」


ロタローが抗議するが、さすがに夜中も過ぎていた。


『しゃあねーよ。もう寝ないと』


仕方なく、カラオケは終わった。





















翌朝…。


「あ゙〜…あ゙〜あ゙〜…」


ロタローの喉が枯れて、可愛らしい声がしゃがれてしまった。


「うわぁ〜ん!声が枯れちゃったよォオ〜」
「昨日夜遅くまでカラオケやってるからだろ」

「いやいや、演歌アダルトメドレーは白熱したなー」
「女の情念を思いっきり歌い上げたよね」
『やっぱり演歌は愛を感じさせるよな〜』


ちみっ子達はリキッドお手製の無花果(イチジク)のコンポートを口に運ぶ。


「アレク。お前は食わねーのか?」


俺がコンポートに手をつけない事を疑問に思ったのか、リキッドが聞いてきた。


『…俺、甘いもんは嫌いなんだ』
「そうなのか?それなら早く言えよな。コーヒー入れるから待ってろ」
『悪い、サンキューな』
「おう」


リキッドがコーヒーを入れてくれて、俺に渡した。
それを口に運ぶ。


「どうだ?」
『うまいよ。ありがとう』


俺はそれを飲みながら、遠くからかすかに聞こえるたくましい足音に耳を傾ける。


『今日もたくましく来るよな〜』
「え?誰が?」
『すぐに分かるよ』


笑顔でそう言ってやると、地面が音をたてて揺れた。


「おお!この力強い足音は」
「まッ…まさかッツ」


紫のレオタードを着て、人喰い熊を担いでやってきた。
そんなセクシーさとたくましさを兼ね備えたのは…。


『ウマ子、今日はまた女の子らしいな』
「紫のレオタードで一段とセクシーだぞ」
「もおぅッ、乙女をからかうもんやないよッツ」


ウマ子だ。
今日もリキッドに首ったけのようである。
リキッドは素敵な姿で倒れてしまった。
そんなリキッドを心配して、ウマ子はまた熊を取りに森へいった。


『俺もついてくよ』


俺はウマ子について行った。
どうしたらあんなたくましくなれるのか聞きたかったからだ。


「む?どうしたんじゃ?アレク」
『ウマ子のたくましい姿を見に来た』
「アレクは褒め上手じゃのおv」


いやいや、おだてても何も出さないぞ。


『俺、そーゆームッキムキな体になりたいんだよ』
「アレクはそのままでも強いと思うが…」
「力だと負けるんだよ。それに俺は特異体質じゃねえから戦う時に不便なんだ」


女は力がないから、男相手だと押し負かされるし、何人もの相手をしきゃいけない時があるから、力は絶対に必要だ。


「ほーか…大変じゃのう」


その時、目の前に大きな熊が…。
ウマ子はすぐさまそいつに向かって行き、眉間に拳をクリーンヒットさせた。


『うおーッ!すっげえー!!』
「わしにかかればこんなもんじゃ」
『流石ウマ子だな!』
「そこにもう一頭おるけん、アレクがやっちゃりい」
「え〜…」


と言ってみても、ウマ子は俺にやらせたいらしい。
仕方なくウマ子のように眉間を殴ってみれば、熊は気絶した。


『お。何だ、簡単じゃん』
「2頭もおれば十分かのお」
『そうだな』


熊を担いでいけば、そこはもぬけの殻だった。


『あれ?居ないな…』
「もーう、リッちゃんは〜…動いちゃ体に悪いのに〜…」
『しゃーねーな。探しに行くか』
「そうじゃな」


熊を担いだまま、島中を探してみる事にした。


「あ、アレクだー」


茂みから出てきたのは、エグチ君だった。


「ウマ子ちゃんも一緒だね。どうしたの?」
『リキッド探してるんだけど、どこに行ったか知らねえか?』
「それならね、あっちの山の方に行ったよ」


そう言って、ある方向を指さして言った。
そっちの方を見て、エグチ君と別れた。


『あっちって…何かあったか?』
「とにかく行ってみるのが一番じゃ」


ウマ子はずんずんと進んで行く。
俺はそれについて行って、しばらくして不吉な山の頂上に来た。
そこには、店らしき家があった。
ウマ子はすかさずその店に入っていった。

そこには、リキッド達と土方さんがいた。
ウマ子は何を勘違いしたのか、「御法度ーッツ」と叫び、土方さんを殴ってしまった。


『ロタロー、あれってなんだ?』


リキッドの持っている飲み物を指して、尋ねた。


「モテない薬だよ」
「あれを飲むとモテなくなるんだぞ」
『何ッ!?俺にもよこせッツ!!』


俺はリキッドからその怪しい色の飲み物を奪う。


『うっ…くせェ…ッ!?』
「てめぇにゃいらねーだろ!!」
『うるせーッ!俺はイトウとタンノが追ってくるのはいやなんだ!!生臭いのは嫌いなんだーッ!!!』
「うわァ…土方さんと同じ悩みを持ってるよ」
「ハッハッハ。モテる男の苦悩だな」


俺とリキッドでその薬お奪い合っていると、ウマ子の目が光った。

殺気…!!?
俺がリキッドから離れた瞬間、リキッドはウマ子に殴られた。
そしてウマ子は、モテない薬を飲み干してしまった。


「アワワ…」


それを飲み干したウマ子は、濃いひげを生やしてしまった。
そしてリキッドは再び素敵なポーズで倒れた。
いくらモテない薬でも髭が濃くなるのはどうかと思うが…。




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