【ただいま】
□浅葱色の中
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声が聞こえる。
誰だろう。
聞いたことあるような…俺を呼ぶ声。
【ただいま】
いつもと変わらない日だった。
今日は島の裏側まで探検してみたくなって、俺は朝から散歩をしていた。
『そういや、こんなとこまで歩いた事なかったな…。ん〜…空気がうまい』
パプワ達はコージが持ってきていた刀で遊んでいる。
刀で遊ぶのはどうかと思うが…。
『まあ、あいつらならリキッドを苛めるだけだろうけど…』
子供に凶器なんて、持たせるべきじゃないんだけどね〜…。
今日あいつらが寝たら見つからない場所に隠しておこう。
で、コージがコケシから戻ったら返そう。
…いつ戻るか分かったもんじゃねーけど。
なんて笑ってみる。
『…何でだろうな……。昔、この島に来た事があるような気がする』
ずっと思っていた。
見た目とかじゃなくて、感じる。
肌で感じる大気とか、島全体の雰囲気とかが…懐かしいって、思う。
パプワ島なんて島、一回も耳にしたこともないし来たこともないのに…。
何故そう思ってしまうんだろう?
《 》
『!?』
ふと、声が聞こえたような気がした。
でも、そこには誰もいなかった。
『…?』
気の所為…か?
さっきの声が気になるが、きっと空耳だろう。
俺は、そのまま森の中を歩いて行った。
そろそろ昼ごろになり、特に面白いものもなかったので、俺は帰った。
そこには、ここで見るはずのないもの…。
いや、見たくないものが見えた。
背中の誠と言う文字。
浅葱色の着物。
腰にある刀。
『………この方々は?』
誰?と言うよりも、何で居んの?と聞いた。
「心戦組の方々です」
ソレが何でこんなとこにいんのさ。
『……あ、ああ。そ、そうなんですか。それはまた…ご苦労な事で……』
「どうしたのアレク?汗かいてるよ」
『あッ暑いからな〜』
心戦組とか、うちの軍と一度戦った事あるんだよ。つい最近。
金の為に軍を攻めてきたのよ、この人達!
なんて野蛮なのかしら!!(←誰)
『おおお俺はアレクです。ついでに言いますと、どこ軍にも所属してません』
「それ言っちゃうと怪しいよ?」
『しーッ、言うなッ。バレちゃうでしょうが!』
「それこそ言っちゃったらバレバレだぞ」
『しまったッ!!』
「心戦組局長、近藤イサミである」
「副長、土方トシゾー」
「沖田ソージです。ついでに一番隊組長です」
「十番隊組長、原田ウマ子…」
自己紹介ありがとうございます。
一瞬で忘れさせていただきます。
『女の人で組長なんてすごいですねー』
「何であれが女って分かったんだ」
『名前に「子」ってついてっし。雰囲気がそんな感じしたから』
まあ、見た目は男勝りですけどね…。
つーか、女でも筋肉ってこんなに盛るんだね。
ちょっと頑張ってみようかな…。
「アレク・ミチェルディード…。てめぇ、“夜叉”だろ」
土方という人が冷たい口調で言った。
「夜叉?何それ?」
「アレクの通り名みたいだな」
「一度、僕らと戦った事ありましたよね?」
『昔の事さね。そんな事は』
「そうだな。昔の事――」
土方さんは冷たく言い、刀を抜こうとしている。
『…刀は抜くなよな』
殺る気ですか。
もう、せっかくの無断休暇なのに。
「な、仲良くしましょうよ。昼飯できましたし…」
『ありがとうリキッド君!ちょうどお腹がすいて困ってたんだ!』
ナイス助け舟!!
今度何かあったら俺も助けてあげるよッ。
「ごちそうさまー!」
「いやあ絶品!リキッド君は料理の天才ですなあー」
「………………そりゃどーも」
リキッドは無愛想にそう言って皿を片づける。
その時だった。
ウマ子の一言で、リキッドの顔が真っ青になった。
「こんな旨い味噌汁毎日作ってくれる漢(オトコ)と――ウマ子結婚したいな…」
ショックで皿を落としてしまうほどだった。
しかも口から何かが出てきている。
そんなリキッドをウマ子は猛アタックしている。
リキッド、君の事は忘れないよ(←助けるとか言っておいて助ける気はない)
そんなこんなで馬鹿やってたら、土方さんが先に帰ってしまった。
この調子で全員帰ってしまえばいいのに。
そう思ったのだが…。
何やら泊まる気らしい。
もう帰ってくれ。
あ、この島からは出られないんだっけ。
「あ、もうすぐオヤツの時間だから土方さん呼んでくるね〜」
『気をつけろよ。奴はハンターだ』
「ハンターは違ぇだろ」
「わかった〜」
ロタローはそう言って、土方さんを呼びに行ってしまった。
パプワとチャッピーもそれについて行く。
「アレク、お前敵ばっかだな」
『困っちゃうよね』
「仕方ないですよ」
ハニーフェイスで言ってくれやがった。
オヤツの時間には、土方さん以外の人とは仲良くなれた。
土方さんは俺への警戒を解いてはくれなかった。
だから頭の固い奴は好きじゃないんだよ…。
こーゆー時はみんな仲良くしようよ。