【ただいま】

□水の中
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つらい事なんて忘れてしまいたい。
だけど、忘れたくない事まで忘れてしまう事ほど、つらい事はないと思う。



【ただいま】



今日はみんなで海水浴に行った。


「気持ちいいねーv」
『ああ、そうだな』
「アレクは服のままで入って良かったの?替えの服持ってないんじゃないの?」


俺は服のまま海の中に入っていた。

だって水着を着れば女だとばれてしまうじゃないか。
いや、バレたら死んじゃうってわけじゃないんだけど、ほら……めんどくさいじゃない。


『飛行機ん中にあるから大丈夫だ』


そう言って、海から上がる。


『タオルタオル…』
「お前、服大丈夫か?」
『替えが飛行機ん中にあるから、それ着てくる』
「持ってきてねーのかよッ」
『おう。だから先帰ってるわ』


そう言って、飛行機まで行く。
中に入って、替えの服を取り出す。

茂みに行って、服を脱ぐ。
さらしを解いて替えのさらしを巻く。
上着を着て、ズボンを履いた。
それから、濡れた服を持って家に入った。


『…………』
「「「…………」」」

『「「「どなた?」」」』


家の中には、知らない男A,B,Cがいた。
とりあえず俺は、3人の話を聞く事にした。


『ガンマ団…』


こいつらはガンマ団の伊達衆とかいう奴らで、「コタロー」を連れ戻す為に来たのらしい。

マジかよ…。
特戦部隊に続いてまたガンマ団が来ちゃったの?


『あーあー、あの殺し屋集団な』


とにかくシラを切る。


「おんしゃあ誰なんじゃ?4年前にはこの島にいなかったようじゃが…」
『あ、アレク・ミチェルディードってんだ。よろしく』

「あ、聞いたことあるっちゃよ」
「新聞とかによく載ってる奴じゃな」
「確か夜叉とか…。写真と顔も同じだべ」


まァ、見事な訛りっぷり☆
すごいよ、聞いてびっくり。

てか、俺ってそんなに有名だったんだ〜v
嬉しいけど嬉しくな〜い。


「何でそげな奴がこの島に――…」


ミヤギがそう言った時、ある気配がした。

きっとハーレム達だ。
陽の高さからして、メシをたかりに来るであろう時間だった。


「どっかに隠れるんじゃ」
「しかし、こんな狭いところに濃密度な男が4人もどう隠れるんだがや」
『俺は隠れる必要ないんだけど』
「オラに任せるっぺ!!」


そう言って、背負っている筆で2人を北海道名物にしてしまった。


「これならおかしくな『どう見てもおかしいだろ』」


デカい、デカすぎるよ。
どう見たって怪しいだろ。

ミヤギが影に隠れると同時に、ドアが開いた。
やっぱり特戦部隊ご一行だ。


「おーい!リキッド〜。メシ食わせろーッツv …って、いねぇじゃねえか」
『リキッドならパプワ達と海に行ってっから昼まで帰ってこねェよ』
「なんだ。そーかよ」


早く帰らないかと思っていたのに、4人はあの木彫りの熊と白○恋人に興味を示してしまった。

そのせいであの2人は連れて行かれた。


「アレクも来っか?」
『んー、どうしよう。そろそろ帰って来るだろうしな…』
「酒飲もうと思ってんだ。一緒に飲もうぜェ?」
『マジで?行く行く〜』


ミヤギの声無き訴えを無視して、俺はそれについて行った。





それからしばらくして――…


「うりゃーッ!かかって来ぉい人喰い熊ーv 俺は“熊殺し”の異名を持つ男だーv」
「隊長、木彫りの熊は人は食べませんよ。G――あの道産子テディベアは服は着んぞ」
「イェ〜イv 溶かしてチョコレートケーキ作るぜェvv」

「アレク、お前もヘラヘラと笑っていないで何か言ってやれ」
『え?』


もうすでに面白い事になっていた。

ハーレムは木彫りの熊と戦おうとしていて、Gはそれに自分で作った服を着せようとしている。
マーカーは青龍刀を振り回しながらそれにツッコミを入れる。
ロッドは白○恋人を溶かしてケーキを作ろうとしている。
窓の外から、2人が中を覗いているようだったけど、それは無視した。

マーカーの手が滑って、その窓の近くに青龍刀がささった。
気がついたんだろうな…。


「血が、見たいな……」
『そのセリフは危ないぞ!マーカーっつ』


今日は初めてマーカーにツッコミを入れた日だった。
なんだか新鮮だ。


『あー…腹減ったな。酒だけじゃあ、さすがに腹もたねえや。俺はメシ食いに帰るよ』
「おう、もうそんな時間か!よし!タカリに行くぞ〜」


家に近づいて行くと、いい香りが鼻をくすぐる。
その匂いを嗅ぎつけたのか、ハーレムは走って勢い良く扉を開けた。


「うぉおお〜v 栗ごはんのニオイ。リキッドー、メシ食わせろ!」
「ぎゃああ〜脱サラ前の元上司ッツ!!!」

『帰ったぞぉv 早くメシちょーだいッ』
「見て見てリーちゃんv 人喰い熊」
「オメーの方が料理うめえからチョコレートケーキ作ってくれよぅv」
「いつまで続くの俺の下っ端人生!」

「まったく騒がしい連中だな」
「もおッ!また部屋がオヤジ臭くなるよ。それにアレクまでおっさん化しちゃってるし」


そう言った時だった。
ミヤギがロタローのお腹に「小太郎」と書いた。


「!しまッ…!」
「…!!!」


ロタローの様子が急変した。
眼が青く光っている。


「コタロー!!!」
『ハーレム!その名前は――!!』



「うわァああああああーッツ」

「んぶわッツ」


水が家の中に入ってきた。
ハーレムにクリーンヒットした丸太には、「美胃婆」と書かれたオショウダニともう一匹のナマモノが乗っていた。

せき止めていた川の水が流れ込んだらしい。
それはどんどん中に家の入って来る。


「流されるぜ!流されるぜー!地震でダムが決壊したぜ!」
「…………………………流されます」

『何してんだオショウダニてめぇ!』
「オショウダニスウィング!」
『そんなもん効くかッツ!!』

「チックショ〜!このままじゃ溺れ死んじまうぜェ〜」
「わーいv 流れるプール流れるプール」


パプワとチャッピーはこんな危険事態に浮き輪で遊んでいた。
リキッドがどうにかするように言うと、パプワが水を吸い上げ、川に岩を落とした。

水がどんどん引き、ロタローが起きた。


「あッれー?」


ロタローの状態に戻っていた。
きっと、水で文字が消えたからだろう。


「わあ〜、家の中じゅう水浸たしだよぉ〜!パプワくーん、誰がこんな酷いコトを」
「うむ、こいつらだ!」


古毛四と書かれた4人を指して言った。
生き字引の筆で、4人をコケシに変えてしまったのだ。

そんな4人を転がしながら、玄関に飾った。


『コタローに手ェ出したらぶっ殺すぞv つーか二度と修復できねえようにオロす』


笑顔でコケシにそう言ってやった。




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