【ただいま】

□腐った奴らの中
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出会いは突然に。
…って感じの言葉があった気がするけどさ。
この出会いは避けたかったよ。


【ただいま】


子供達は今日も昆虫採集に、森へ出かけていた。
今日は俺もついて行った。


「着いたぞ」
「森の空気は気持ちいーねー!」
『いっぱい鳴いてんなー』


ヒグラシの森。
そこは蝉が大量に居て、大音量で鳴いていた。
ロタローが茂みを探ると、そこには蝉の幼虫に寄生したキノコがいた。


「ナニ寄生してんだーッ!!!」
「失敬だにゃ〜。この高級漢方薬材を狙ってきたな。ハイエナめ!」
「ナニが漢方だよ。オマエ猛毒だろ」
『冬虫夏草って…』


蝉の幼虫がお礼と言って、抜け殻をくれようとした。
だが、ロタローは抜け殻ではなく、蝉本体を捕まえた。


「ハァーイv パプワくん、チャッピー、ロタローくん、あたしのダーリンv」
『誰がダーリンだよ』
「おお!タンノくん、イトウくん」
「まあv コチラ新しいお友達?」
「うん!大物だよ。立派な標本ができるね」
「はじめまして。そしてサヨウナラ」


うん。ごめんな。
7年間頑張ってやっと出てきたところを標本にしようなんて…。


「大物といえば――…今朝、海に大きな魚が上がったんですってー!」
「なんか不思議な形してるらしーわよぉ!」
「へえ〜。あとで見に行ってみよーよ」
「おう」
『そろそろ昼ごはんの時間だから、そのあとでだぞ』
「うんv お腹ペコペコだよー!」


2人はさっきの蝉に掴まって、家に帰っていった。
二人には悪いが、俺は先にその魚とやらを見に海に行った。
そこに行けば、ハヤシくんという恐竜がその魚とやらに噛みついていた。


『……魚じゃねーじゃん』


飛行船のようだった。
何かマークのようなモノが見える…。


『ハヤシくーん。それ何か描いてあんだろ?見せてくんねえ?』


そう頼むと、ひょいと持ち上げた。
そのマークは…。


『………ガンマ団だァ…』


俺は思わず頭を抱えた。

うわー、どうしよ…。
敵だ☆


『人影が見えたら隠れる。うん、それしかない』


それから、辺りに警戒しながら家まで歩いた。
それもただの無駄で、何事もなく家にたどり着いてしまったのだが。


『リキッドはどうしちゃったのさ?』


生首になって、青くなっていた。
青くなってる理由は、頭から血液をチューチューと吸っているこの未確認生命物体のせいだ。


「頭に血が上っていたから少し冷ましてやろうと思ってな!」
『一滴も残らず吸い取られようとしてますね』
「ええい!どかんかUMA!!」
「チュパーっつ!!!」


リキッドは自力で地面から這い上がった。


「俺はこんな事やってる暇はねーんだよッ。ノロノロしてっとあいつらが来ちまうぜ!!こーなりゃもお戦争だッ!そうさ戦争…戦…ソ、セ……ン、洗脳ー」


リキッドは宇宙人に洗脳されてしまった。
そしてそのまま、スキップしながら外へ出かけて行った。


『……昼メシ喰ったか?』
「ううん。まだ食べてないよ」
『んー…。用意すらしてねーのかよ…。ちょっと作ってやるよ』
「作ってくれるの?やったv」
『期待すんなよ?』


俺はその辺にあるものだけで簡単なものを作る。
それを食べてから、広場へ行くことになった。


「すごいねー!パプワ島にはお盆もあるんだ」
「ああ!年に1度、この日だけな」
『お盆って何だ?』
「ご先祖様をもてなす行事だよ」


へえ…ご先祖様、ねェ……。


「パプワくーん。用意が出来たよーv」
「よーしみんな!やぐらに火を灯すぞ!!」


パプワとチャッピーがシットロト踊りをしてから、やぐらに火がともった。


『迫力あんな〜』
「パプワ島のお盆は豪快さが売りだからな!これしきで驚いてちゃダメだぞー。こっからがメーンイベントだ!」
「楽しみーv」


ロタローがそう言うと、いきなり地面がぼこぼこと盛りあがってきた。
何だと思い、そこに注目していると、そこからゾンビが出てきた。


『ぎぃやああああッツツ!!!!ゾンビーーーーッツツ!!』
「ひゃあ。ナマモノのゾンビがいっぱいだー!」
「今日はご先祖様達の里帰りの日なのさ!」
「う〜あ〜」
「会いたかったわぁ、おじーちゃまァv」


タンノがすぐそこで再会を喜んでいた。
ほかのナマモノ達も、先祖たちに会えて嬉しそうだ。


「ゾンビは第2のパプワ島の夏の風物詩だ!」
「夏場はキッツイね」
『しッ、死体が動いてるぅ…。ロタロぉー!パプワぁー!』
「怖いの〜?」
「ハッハッハ!アレクは怖がりだな」
「意外な弱点だね」
『だって……。!?』


いきなり、風が吹いた。
自然のものじゃない……。

火が消えて、ゾンビたちも消えて行った。


『……………』


ゾンビがいなくなってホッとしたけど、無性にイラついた。
パプワが茂みの方へ行き、新たな生け贄を連れて帰ってきた。
大人だ。
きっとガンマ団のあの艦に乗ってきた奴らなんだろう。
奴らに目を合わせないようにする事にした。

みんなでやぐらを立て直し、祭りが再開した。


「わーいv またナマモノゾンビたちが沸いて出たねー」
「お盆はまだまだこれからだぞー!」
「サンバよサンバよーv」
「夜通し踊り明かすわよーv」


お盆という行事に似合わなさそうな踊りをやっているゾンビとナマモノ達…。


「アレクも踊ってくれば?ゾンビにも慣れてくると思うよ」
『むりムリッ!絶っ対に無理ッツ!!』
「チャッピーは踊る気満々だよ」


チャッピーの方に目をやれば、綺麗なサンバの服を着ていた。
可愛すぎるよ!


「チャッピー素敵v」
「わうv」
「パプワ島のお盆祭りは楽しーねー」


何でみんな楽しそうなのかな。
ホラ、目ん玉飛び出してるし、皮膚めくれてんよ?
恐ろしいじゃない、そんなのがウジャウジャいたら…。


『…俺、あっちでテキトーに踊ってから、何かあったら呼べよ?』
「うん」


そう言って、ロタローたちから離れる。

ナマモノ達が笑顔でサンバを踊ってる。
それを見てると、なぜか心温まるものがあった。


「アレク!腰よ腰!腰の動きがなってないわ!」
『難しいんだよ…』
「う〜お〜…」
『ぎゃあ!うわー!近づくなー!』
「んもう。ゾンビくらいで騒ぐなんて可愛いわねv」


それから、祭りがお開きになるまでサンバを踊った。


『ゾンビ怖いゾンビ怖い…』
「ねえ、今度バイオ○ザード見ようよ」
「うむ!そうだな!」
『やめてくださいッ』




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