【青の鳳凰】

□汚点
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その後眠りについたノキは、翌朝、微弱ながらもはっきりと主張する頭痛に目を覚ました。
この痛みは知っている。
ああそうかと呟きながら、ベッドから離れて医務室内から甲板へ出た。


「お、やっと起きたか」


ノキが起きた事に気づいたのはサンジだった。
ノキはおはようとだけ言って海を見渡す。
やっぱり。
赤くそびえ立つ大陸が、すぐそばで船の行く手を阻んでいた。
“赤い大陸(レッドライン)”――世界を両断する巨大な大陸。
ノキは見えない頂上を睨みつける。
くまやセンゴクから、マリージョアに来いと言われているが……気分が乗らない。
それはいつもの事だが、今回はいつも以上にマリージョアへ行きたくなかった。
いつもならさっさと飛んで行けるのだが、今は背中に翼がない為さらに手間をかけなければならない。
気分が乗らないのはそのせいだ。

しかし、なぜ未だにこんな所でのんびりしているのだろうか?
ノキが赤い大陸(レッドライン)から視線を外した時、ナミが何か思いついた様にノキを見遣った。


「ノキ、あんた知ってるわよね?魚人島の行き方」
『え』


あの島に行かないのはそれが理由か、と一人で納得する。
行かないのではなく、行けない。
目的地へ行く方法を知らないのだ。
すでに聞いているものだと思っていたノキは少し回答が遅れた。


『あ〜…。それは』
「ぶはーっ!!出たぞ〜〜!!あー面白かったー!!」


ノキが魚人島への行き方を説明しようとした時、海から潜水艇が飛び出した。
ルフィ、ロビン、ブルックだ。
海底を探していたらしい。


「おかえり、ごくろう様!」
「だめだ全然、海の底も見えねェや。本当にあんのか?魚人島!!」
「その行き方を今ちょうどノキに聞いた所なの」


潜水艇に乗っていた3人はノキの名前に反応した。
もう起きて大丈夫なのか、とルフィが問いかける。


『だいぶよくなったよ』


ただ、少し。
ほんの少しだけ、痺れる様な痛みが背中を這いずり回る。
だが、それだけだ。
それ以上は、何もない。
と、自分の脳へ言い聞かせている事をノキは気づいていなかった。


「魚人島ってどうやって行くんだ?」
『ここからじゃあ行けないよ』


苦笑しながら答える。
どこからどうやって行くのかを説明しようとした時、ルフィ達が乗っている潜水艇のすぐ側で気泡が弾けた。
そして、海王類が飛び出した。


「“海兎”ィ!!!」


けたたましい鳴き声と共に海兎がサニー号へ襲い掛かる。


「海の上でおれに勝てると思うなよ」


そう笑顔で言ったルフィが構える。


「“ゴムゴムの回転銃(ライフル)”!!!!」

「なんかデカく感じなかった…」
「オーズ見ちゃったからな!!いっとき大丈夫だ。がははは」


倒れていく海兎を見ながらウソップとチョッパーがそう言った。
その海兎の口から何かが飛び出した。


「ん?魚?」
「人!?違う!!」
「まさか」
「ま!!まさか〜!!」
『!!!』


ノキの表情が険しくなった。
シルエットが、特徴的すぎた。
注目を浴びた人物は、目をハート形にしたサンジの元へ落ちる。


「わーっ!!人間の人潰しちゃったーー!!」


脚の代わりにあるものは、泳ぐ為に特化されたものだ。
尾ヒレ――人魚と呼ばれる種族が持っているものだった。


「消化されそうな所助けてくれてどうもありがとう!!私、海獣に食べられやすくって!!」


かれこれ20回目くらいだと言う。
お礼にタコ焼きという単語を出すと、ルフィが飛びついた。


「じゃあ!!お一人500ベリーになります!!」
「商売かい!!!」
「間違えちゃった〜〜〜!!!」


ノキは表情を隠して医務室へ戻ると、深いため息と共に扉をゆっくりと閉めた。


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