【青の鳳凰】

□死者の舞踏会
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寒い。
血液が足りなくなっているのか…?
気がついたノキの目の前には無機質の壁と自分から流れ出る赤が広がっていた。
錆びた鉄の臭いを発する温い液体が、背中から床へと伝ってノキの体温を徐々に奪っていく。
悪魔の実を食べてからは暑いだの寒いだのといった“熱”を感じないようにコントロールしていたのだが、今は自分の体温を調整する程の体力がないのだろう。

しかし、ここはどこだ。
ノキがいるのは、研究室ではない様だ。
何もない小さな部屋……どうやら、閉じ込められているのらしい。


『…………シ……“緑の(シノー)…”』


風を起こそうとすると、激痛が襲う。
声帯も思う様に震えず、声は蚊の羽音の如く小さかった。
息を深く吸い、さらに強まる痛みを我慢して、緑色の風を起こす。
その風が傷を覆うと、痛みが和らいだ。
気休めだが、ノキにはそれで充分だった。
ノキは床に手をつき、ゆっくりと立ち上がろうとするが、そのまま床に崩れる。


『……っ』
(力が入らない…!)


傷口が塞がる感覚が背中を這う。
あまりいいものではない。
腕に力を入れて、床から起き上がる。
ガタガタと腕が震えている。


『く…そ……っ!!』


殴る勢いで壁に手をつき、立ち上がる。
膝が激しく揺れる。
しばらく立ったまま、傷の回復を待つ。
傷口が塞がると、体力もある程度回復し始め、膝の揺れが和らいだ。


『……よ…よし…』


まだ脚は震えているが、歩けない事もない。
扉の前まで、壁に手をつきながらゆっくりと歩き、ドアノブを回した。
鍵はかかっておらず、その扉は音を立てて開く。


「誰だっ!?」
「海賊の仲間だ!」
「捕まえろ!!」
『……!!!』


廊下にはゾンビ達がいた。
夜討ちの為、それらはノキに襲い掛かる。
ノキは風を動かす。
鋭くなった風がゾンビ達の体を切り裂く。
ツギハギの部分から切り離されて、ゾンビ達の動きを止める。


『……おれ…は……、仲間じゃ…ない』


そう言い、ノキは廊下を進んだ。
翼は?ナミ達は?今、何が起こっている?
ノキの頭にいくつも疑問が浮かぶ。
進めばわかるだろうと廊下を歩き続けると、森に出た。
屋内になぜ森があるのか…ノキはそう思いながら、その森を見渡した。
ゾンビの気配がある。


(ここもか……)
『………“黒の風(サーブル)”』


黒い風がノキを覆う。
それから森を歩いて行くと、ゾンビ達はノキに気づかなかった。
注意深く探されなかったり、音を立てたりしなければ、存在が消えたかの様に、他人にはノキの姿が見えない。


『う…わ……』


フラリとよろける。
そのまま、芝生に倒れる。
傷口が開き、緑色の芝生が赤く染まる。
ゾンビがノキに気づいた。


「海賊だ!!」
「捕らえろ!」
『!』


ノキは何とか立ち上がり、目の前のゾンビを薙ぎ倒す。
しかし、ラチがあかない。
壁によじ登り、そこから下へ飛び降りた。
下にも通路があり、ノキはそこに降りた。
ゾンビの気配は……。


「おわァ!!!」
「ハァ!!…ハァ」


フランキーとロビンだ。
ゾンビに追われている。


「ノキ!」
「あァ!?てめェは無事だったのか!」
『……なん、とか…。…2人…だ、け?』
「え、ルフィは………!?」
「まだ出て来てねェ様だな。振り返ってもあのバカ、ヨロイ着てやがるからどこにいるやら」


2人が振り返る。
ゾンビ達はすぐそこまで来ている。
フランキーがルフィを呼ぶと、物音と叫び声が聞こえた。
建物と建物に繋がれていた鎖が回り出し、棺桶が出て来た。


「ちきしょう、出せ!!」
「何だ…?棺桶!?」
「……!?今の声…!!」
『ルフィ…!』


棺桶は向こう側の建物まで運ばれていく。
それを追って駆け出すと、行く手を阻もうとするゾンビが現れた。


「ヘイヘーイ!!!モーンキモンキー!!!モンキ〜♪あっあっあっあっあっあ!!巷で噂のスパイダーモンキーとはおれの事だ!!!」
「巨大グモ……!!!」
「昆虫の域を超えてる!!化けグモだ!!」
『棺桶が…!!!』


棺桶が中へ吸い込まれた。


「安心しろ、どうするかはお前達も身をもって体験できる…!!せめて自分達の心配をしろ…!!」


前方にスパイダーモンキー、後ろにはヨロイを着たゾンビが迫る。


「――これで一味は全滅だな」
『「「!!?」」』


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