【青の鳳凰】

□奮戦、奪還
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――………。


声が聞こえる。
何を言っているのかはわからないが、ノキを呼んでいる様に、ノキには何故かわかっていた。


――ず…………だ…。


ノキの耳に届く声は、玉を転がす様な美しい響きを持っている。


(聞こえない…)


闇の中でノキはただそこに佇み、声のする方を探して首を動かす。
しかし声の主はどこにもいない。


(誰なの…?)


ノキは断片的にしか聞こえない声を求め、当てもなく走り出した。


――ザ、私…ザッ………き…よ。

――……は……だ…。

――ザザッ。


特定の声が過ぎる。
それはノキに話しかけている様にしか聞こえなかった。


(もっと聞きたい……!!)


ノキの走る先に、突然赤い光が立ちのぼった。
その光は炎の様に揺らめき、ノキの行く先を遮る。


――逃げて!!!


先程と同じ声がノキの体を突き飛ばし、光から遠ざけた。
何故かノキはその光を前に、後退していった。
いや、ノキ自身が後退しているというよりも、光が後ろに下がっている様にノキには思えた。


――…よ…も………き…!!ザザッ…!!!


その声はだんだんノキから遠ざかって行く。


(誰……待って…!!!)



















目を開くと、そこには天井があった。
もちろん、麦わらの一味は誰一人いない。


『……“緑の風(シノープル)”』


刀傷に緑色の風を当てる。
それは傷口を纏い、ノキの傷を修復していく。


(今の状況は……)


目を瞑り、現在の状況を確かめるために意識を集中させる。


(砲撃されてる…バスターコールを発動させたのか…。ルフィ達は……大丈夫だろうな、それよりも助けるのは…ルフィ達と一緒に来たフランキー一家だね……)


ノキは進みだした。
司法の塔から出て、本島へと翼を広げて飛ぶ。


「逃げろ!!急げ!!!」
「お、おい!後ろから鳥が飛んで来るぞ!!」
「いや鳥じゃねェ!人!!?」


ノキはソドムの背中に降り立った。
新手の敵かと、フランキー一家は構える。


『砲撃が当たらない様にするから、そのまま走って』


ノキは風を操り、砲撃を逸らす。
その様子に鼻白みながらも、フランキー一家はノキを連れて正門へと進んで行く。


「あ、ありがてェ…!!」
「よし、急ぐぞ!!!」


フランキー一家はノキを加え、走り続ける。


「急げ!!!」
「エニエスロビーの入口は……!!「正門」はすぐそこだ!!!」


フランキー一家とノキは正門間近まで来ていた。


「逃げきれるぞ!!!」
「ウオォオオォ!!!」


行く手を阻む正門を蹴破る。
しかし、目の前には軍艦がすでに待ち構えていた。
島にいた海兵や役人達の回収をしているところだった。


[抵抗は無駄である!!海賊共!!動けば一斉に射撃・砲撃する!!!]


ゾクッ!!!


『!!!』


恐怖心がノキを襲う。
今まで感じた事のない、冷たい腕に首筋から背中を撫でられる様な感覚。


「マズイぜこりゃあ〜〜!!!」
「確かに逃がしてくれる雰囲気じゃねェな」
「後ろは滝と…」
「燃える島…!!逃げ場だってないわいな」
「前面からは銃口!!砲口!!」
「今何考えてる、パウリー」
「…人生の思い出」
「縁起でもねェ…!!」

[海兵・役人の回収完了――。各艦正門より――距離を取れ]


軍艦が後退していく。


『…少しだけ後ろに下がって』


ノキはソドムから降り、巨人達の前に立った。


「お、おい、あんた何するつもりだ!?」
『…おれと君らが殺されない様に、努力するつもりだよ』


ノキは自分の傷を覆っていた緑色の風を消し、悪魔の実の能力を発動させようと構えた。
その時、パウリーも巨人達から降りた。
そして、ノキの手前に落ちていた電伝虫の元に駆け寄る。


[砲撃用意…]

「おい!!」
「パウリー、戻れ!!!」
「どうすんだ、電伝虫なんて拾って!!!」
「麦わら達の状況をつかめる!!」
『早く下がれ!!!』


ノキは電伝虫を持ったパウリーの襟を掴んで自分の後ろに引っ張る。
軍艦から砲撃が放たれ、ノキ達に襲い掛かる。


『“熱壁(フィエヴル・ミュール)”!!!』


高熱の壁が砲撃とノキ達の間に立ち塞がる。
砲弾は壁に当たり、爆発する。


『“銀の風(アルジャン)”!!』


軍艦を白銀の風が包み込む。
一艘の軍艦が方向を転換し、隣の軍艦に砲口を向ける。


「何をしている!!!海賊共はあっちだぞ!!!」
「そ、それが…体が勝手に!!!」
「ふざけた事を抜かすな!!!」

『“熱風(ヴェント)”』


ノキの放つ風が軍艦から迫る砲弾を溶かす。


「あいつです!!!あのマントの男が砲撃を防いでいます!!!」
「あの男に集中させろ」

『う…』


ノキの上体が揺れる。
風操りのせいだろう。
しかも、ゾロから受けた傷が開きかけているらしい、血が足元にポタポタと落ちている。


「お、おい、お前…!!」

[今だ、撃て]


ノキの隙を狙い、砲撃が放たれた。


「!!!」
「畜生ォ!!!」
「ギャー」
「砲撃だ〜〜!!!」
「アニキ〜〜!!!」
『…!!!』


ドドドォ…ン!!!


砲撃がノキ達に命中し、ノキ達は崖の底へ落ちていった。


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