【青の鳳凰】
□奪われた花
3ページ/9ページ
「成程…――このウス汚い倉庫は…――かつての造船会社トムズワーカーズの……本社か」
「………!?造船会社………!?」
何も知らないウソップは状況を飲み込めず固唾を飲み込む。
「3人で造船に勤しんだ思い出の場所というわけだな。――それを“秘密基地”と呼ぶとは、ずいぶんとかわいげのある事をするんだな」
「黙れ。…………さっさとここから出ろ!!!」
「貰うべきものを貰ってからだ。“船大工”カティ・フラム」
「設計図はここにはねェよ!!!」
そう怒鳴ると、ルッチは机を蹴り、カリファに指示する。
カリファは棘の鞭でフランキーを縛り上げる。
「別に今すぐ答える必要もないさ。我々には切り札がある」
睨むフランキーに、ルッチは冷たくあしらい、言葉を続ける。
「8年も昔の話だが…カティ・フラム…。君は犯罪を犯してるらしいな。トムと同じ様に」
「フザけんな!!!トムさんは犯罪者じゃねェ!!!!てめェなんかが………わかった風な口きくな!!!!」
と、啖呵を切る。
「犯罪者ならば自分がどういう道を辿るか…わかるハズだ」
「てめェらがどれ程……!!!このウォーターセブンを知ってるってんだよ!!!!」
「我々の聞いている、トムという男は…腕は確かだが凶暴で手に負えない怪力の魚人、町の人間に聞いても口をにごすばかりだ。そんな男をかばわなきゃならない弟子も大変だな、カティ・フラム」
「………!!言い返す気力もわかねェよ………。…てめェら政府の人間はみんなクソだ!!!」
「うオイオイ…!!」
フランキーの言い様にウソップは戦く。
「当時、このウォーターセブンで海兵とその他役人に100人を超える重傷者を出した…その犯人がお前だ」
その日の内に“海列車”の事故で死亡確認された為に罪は無効となっていた、と続けた。
「改めて、犯罪者としてお前をエニエス・ロビーへ連行しよう。――そこでゆっくり答えてくれるといい……“プルトンの設計図”のありかについて……」
ブルーノが電伝虫の受話器をルッチに渡す。
その受話器を、フランキーに向けた。
「ウチの長官にこの件の報告をしたら、彼はすぐにでもお前と話がしたいと言うんだ」
「どうぞ、長官」
[うわあっちあち熱っ!!コーヒーこぼしたっ!!あっちー!!!畜生ォ!!!こんなコーヒー!!]
聞こえたのは火傷して慌てる男の声と、カップを叩き割る音。
しばらく沈黙が流れ、冷静になった男が口を開いた。
[そこにいるのか、カティ・フラム………!!久しぶりだ。まさかおめェが生きていたとはな。信じられねェが…嬉しいニュースだ]
「誰だおめェは」
「この8年間……傷が痛むたびにおれはぶつけ様のない痛みに苛まれて生きて来た。自分を傷つけた犯人が死んじまってたからさ」
「……!?」
フランキーは電話口にいるのが誰かまだ分からない様である。
[憶えてねェか!!?8年前“CP5(サイファーポールナンバーファイブ)”で襲撃現行犯「T(トムズ)・ワーカーズ」を逮捕した男さ!!]
「!!!てめェまさかスパンダ!!」
[ムだっ!!!ワハハハ!!エニエス・ロビーでお前の到着を心待ちにしているぞ]
高らかにそう言うと、スパンダムはさっさと連れて来いと言い残して通話を切った。
ブルーノがフランキーを袋に詰め、ロープで縛る。
「おい待てお前らァア!!!そいつを放せェ!!!あと、そいつノキだろ!そいつも放せ!!!」
ウソップがカクに担がれているノキを指しながらパチンコをめいっぱいに引き、構える。
しかし、ひとたびルッチが睨むと即座に謝った。
「うをいっ!!!お前の輝きは一瞬かァ!!!」
と、フランキーに突っ込まれても仕方がない程の早さだった。
カクが、ふと気付く。
「お前確か…“麦わら”の…仲間じゃな…」
「あァ…!!あ〜あ…!!やられちまった…!!」
ブルーノに担がれたフランキーは失望の込もった声で言った。
ウソップはというと、カクにやられて倒れてしまった。
カクがウソップを指してカリファに指示し、メリー号に触れる。
「――それとこの船、処分しておらなんだか…」
「……おいてめェ…!!!そいつに触るなよ!!?」
ウソップが力んでそう言うが、カクはメリー号をつないでいたロープを外した。
「おい!!!聞いてんのかっ!!!」
「仮の姿とはいえ、わしらはこの町ではれっきとした船大工。ダメなものはダメだと聞き入れて欲しいもんじゃ」
カクは海に面した扉を開ける。
「それがどうした、放っとけよ。お前らの船じゃねェんだから!!!」
「これで…水が出せるんじゃな…」
床に設置されたレバーを押し、水をはける。
「待て!!!バカなマネやめろよ!!?おいっ!!!」
ウソップの叫びは空しく、メリー号は荒々しく波打つ海に落ちていった。
「メリ〜〜〜!!!」
メリー号の姿は海に消え、ウソップはフランキーと同じ様に縛られた。
4人は気絶するノキと暴れるフランキー、ウソップを連れて倉庫から出ようとした。
『ん……』
ノキが意識を戻し、身を捩らせる。
「気がついたか」
『ずいぶんと乱暴なマネ……』
前に担がれている2つの袋を目にし、言いかけた言葉を止めた。
声からして、1人は先日会ったばかりである男。
もう一人は、かすかな記憶だが聞き覚えがあった。
「あ、ノキ!起きたのか!よし!こいつらを倒してくれ!!」
「ノキだと!!?コラてめェ!!トムさんの事憶えてるか!!?」
『……もっかい気絶させて』
「無理な話じゃ」
と、カクはノキを下ろし、手錠を外した。
2人の様に縛られていないノキは、仕方なく自分で歩く事に。
「おーい、ノキ!頼むからこいつら倒せって!」
『絶対おれより強いから、ムリ』
「頑張れよ!!!」
と思わず突っ込むウソップ。
「なんじゃ、知り合いか」
『一応はそうだね』
そう言うと、まだかすかに痛む首を押さえた。
ウソップはノキが反抗しない事を怪訝に思ったのか、眉を顰める。
「ノキ!もしかしてお前、こいつらの仲間なのか!!?」
『…仲間ではないけど、今は協力してる』
「はァ!?本気か!!?」
「長っ鼻…そいつァ昔から政府の仲間だぜ!!」
フランキーはまるでノキに怒鳴る様に言った。
『仲間じゃないってば。昔も、一時的に協力してただけだ』
怒りを込めた口調でフランキーに言うと、ウソップに視線を移した。
『そういう事だから、ごめん』
ノキはそれ以上、ウソップ達と言葉を交わす事はなかった。