【青の鳳凰】
□水の都とCP9の企図
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話が終わり、ノキはソファから立ち上がった。
「次からは早く来い」
『…考えておくよ。こっちも忙しいんだ』
と、扉に手をかけ、ふと振り返った。
『…そっちが知ってる事は?』
「ないな」
『………そうか…』
表情を曇らせ、扉を押しあけた。
ズキン…と頭痛がし、足を止める。
思わず頭に手をやる。
『…』
(またか…)
マリージョアに来るたび、ノキは頭痛が起こしていた。
円卓会議の時も、また然り。
「どうした」
『……なんでもない』
背を向けたままそう言うと、ノキは部屋から姿を消した。
「……そろそろ、危険だな…」
「ああ。…見張っておくべきか」
船に戻ったノキは鳥を放し、電伝虫のふもとに置いてあるメモ用紙をゴミ箱に捨て、仕事を始める為に船を進めた。
『…ん?…ウォーターセブン……アイスバーグ…?』
ひとつのメモ用紙を見て、目を止めた。
見覚えのある名前だった。
『………ああ、あいつか…』
顔を頭の中に思い浮かべ、ため息をついた。
空を見上げ、風向きを確かめる。
そこからウォーターセブンに向かうとなれば、追い風だった。
帆を広げ、船を順調に進んで行った。
航路を進んで行く中、疲れが溜まっていたのかノキは寝てしまった。
そして気づいた時には、ウォーターセブンが見えるところまで来ていた。
『ん……あァ、もう着いたのか』
あまり早く着きたくはなかったようだが、着いてしまったものは仕方がない。
ノキは船を止め、港に降りた。
ヤガラブルを借り、街中を回る。
仕事などお構いなしの様だ。
「おう嬢ちゃん!水水肉いるかい!?」
『おれ?あァ、おれは男だよ…。いくら?買うよ』
と、財布から小銭をいくらか出し、店の人に渡す。
「あちゃァ、あんた男か」
『よく間違われるよ』
「悪ィな。サービスで一つおまけしてやるよ」
『本当?ありがとう。あァ、そうだ。アイスバーグってここの市長なんだよな?』
と、身を乗り出して訊いた。
その言葉に、笑いながら頷く。
「そうさ、あの人はすげェ人だぜ」
『そっか。ありがとう』
ヤガラブルを走らせ、水水肉を口に運びながら中心街へ向かう。
そこへ行かないと、ガレーラカンパニーには着かないのだ。
中心街へ着き、すぐに本社へ入った。
受付にいき、フードを外す。
『アイスバーグって人に会いたいんだけど』
「どちら様でしょうか?」
『水上の情報屋って言ってくれればわかると思うから』
と言うと、受付嬢は電話をかけた。
しばらくして、ノキを案内させると、扉をノックし、部屋に入れた。
椅子には男性が座っており、その傍らに秘書らしき女性が立っていた。
「ンマー、昔と全く変わりないな。水上の情報屋」
『……電話してきたんなら、話があるんだろ?おれは早く話を済ませたいんだけど』
「そう焦るな。話っつっても、愚痴を聞いてもらおうと思ってただけだ」
ノキはため息をつき、ソファに座った。
「紅茶かコーヒーはいりますか?」
『あ、紅茶で』
「紅茶はストレートですか?」
『あ〜…。うん、お願い』
秘書らしき女性が部屋から立ち去ると、アイスバーグはノキに視線を戻した。
「彼女はおれの秘書で、カリファだ」
『なかなかの美人だね』
と、扉を見つめながらいい、机に足を乗せた。
『…どうせ、愚痴を聞いてもらう為に呼んだんじゃないだろ?』
「ああ。聞きたい事がいくつかある」
その時、扉が開いた。
カリファが紅茶を持ってきたようだ。
「無礼者!」
突然、ノキの頭めがけて蹴りを入れた。
ノキはそれを寸でのところで避け、足首を掴んだ。
『…秘書って言ったよな?』
「ああ。秘書だが、カリファは強いぞ」
ノキはカリファから手を放し、机から足を下ろした。
姿勢の事だと、すぐに気付いたらしい。
紅茶を受け取ると、一口飲む。
その時、アイスバーグはカリファを部屋から出した。
2人で話がしたい、という事なのだろう。
「……昔に…関わっていたそうだな。ニコ・ロビンと」
『…一応はね』
カップを置き、足を組む。
アイスバーグを睨むように見て、口を開く。
『彼女に何か思い入れでも?』
壁に貼ってある、彼女の手配書を見遣る。
古いせいか、少し黄ばんでいる。
「古代兵器を復活させる可能性を持っているからな」
『…彼女にその意志はないよ』
再び紅茶を口に運び、ひと息つく。
「ニコ・ロビンもだが、お前にはその意志があるのかという事が聞きたい」
『ない。これは絶対』
はっきりと言うノキは、アイスバーグを睨んでいた。
しかしその眼光はすぐに緩んだ。
『それに、復活させたところで何がある?世界が滅びるってんなら、800年前に、既に滅んでる筈だよ。今兵器が存在していないとしたら、設計図がなければ作る事は出来ないし…ねェ?』
アイスバーグの目を見てそう言った。
最後のところだけ、強調させる様な口調で、ゆっくりと。
そんなノキの目から逃げる様に目を閉じ、ため息をついた。
「ンマー…なんだ、こんな事は話したとこで無駄か」
『そういう事だね』
ノキは立ち上がるとフードをかぶり、アイスバーグを見遣った。
『気をつけた方がいいよ。まだ狙ってる人はいるから』
「ニコ・ロビンもか」
『……可能性は0ではないけど…その意志はないって事だけは憶えといて』
そう言うと、扉を開けた。
『おれはしばらく宿に泊まってる予定だから、また話があれば電話してよ』
「ああ。気が向いたらな」
その返事を聞き、ノキは後頭部を掻きながら本社から出た。
それと同時に、ある海賊団がこの島に着いていた。