【青の鳳凰】
□未体験の白い海
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「…………去ったか…………」
空の騎士は、男の去って行った方角を見て、呟く。
「何なのよ一体……!!あいつは何者だったの!?」
ノキは口を開いたが、一度考え直して、何かを言うのをやめた。
「それに何よあんた達、だらしない!!!あんたも!!4人がかりでやられちゃうなんて!!」
「いやまったく…不甲斐ねェ」
「なんか体が……うまく動かせねェ」
『空気が薄いからだと思う。ここは下の海より5000m以上も上空だから』
ノキは首をさすりながら、そう言った。
「ああ……そう言われてみれば…………」
酸素が少ないため、体がうまく動かない。
ノキは、普段から空を飛んでいるから、少しは動けたのだ。
「おぬしら、青海人か?」
「?何それ。…そうだ、あなたは誰?」
「我輩“空の騎士”である。青海人とは、雲下に住む者の総称だ。――つまり、青い海から登ってきたのか」
空の騎士がそう問うと、ルフィがそうだと答えた。
「ならば仕方あるまい…。ここは“青海”より7000m上空の“白海”。さらにこの上層の“白々海”に至っては1万mに及んでいる」
『つまり、普通の青海人では体が持たない…ってわけ』
「おっし!!だんだん慣れてきた」
「そうだな。さっきより大分楽になった」
「イヤイヤイヤイヤ」
『ありえないでしょ…』
慣れてきたと言うルフィとゾロの2人に、ノキと空の騎士は否定した。
「それより、さっきの奴海の上を走ってたのは何でなんだ?」
チョッパーが、興味深そうに空の騎士に聞いた。
しかしそれには答えず、ビジネスの話に入った。
空の戦いを知らなければ、ゲリラに襲われるか空サメの餌食になる。
空の騎士はフリーの傭兵だと言う。
「1ホイッスル500万エクストルで助けてやろう」
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「何言ってんだおっさん」
「ぬ!!」
何も知らない彼らにとって、そんな意味不明な単語を言われても困るだけだった。
「バカな…格安であろうが!!これ以上は1エクストルもまからんぞ!!我輩とて生活があるのだから!!」
「だからそのエクストルって何なんだよ。ホイッスルがどうのってのも」
サンジはタバコの煙を吐きながらそう言う。
その言葉に、空の騎士は目を丸くした。
「ハイウエストの頂からここへ来たんじゃないのか?ならば島を1つ2つ通ったろう」
「だから何言ってんだ。おっさん」
ルフィが頭に?を浮かべる。
ナミは他にここへ来るルートがあるのかと尋ねた。
「……なんと!!あのバケモノ海流に乗ってここへ!!?」
『度胸あるね…。おれだったら死ねるよ』
「死ねるて…」
「……普通のルートじゃないんだ……。やっぱり…」
涙を流すナミに、ルフィは着いたからいいじゃないかと言う。
そう言う問題ではないと思うが…。
「1人でも船員を欠いたか?」
「いや、全員で来た」
「つーか、1人増えた」
『え?おれ?』
「他のルートでは、そうはいかん。100人で空を目指し、何人かが到達する、誰かが生き残る、そういう賭けだ」
突き上げる海流(ノックアップストリーム)は、全員が死ぬか全員到達するか…という賭けなのだ。
『0か100か…。命を賭ける奴は、最近じゃいないからなァ…』
「うむ。度胸と実力を備えるなかなかの航海者たちと見受けた」
空の騎士は笛を落とす。
「1ホイッスルとは、一度この笛を吹き鳴らす事。さすれば我輩、天よりおぬしらを助けに参上する!!!」
それが、ビジネスの内容の意味だった。
ノキはそれを理解して、頷いた。
「本来はそれで空の通貨500エクストル頂戴するが、1ホイッスルおぬしらにプレゼントしよう!!その笛で、いつでも我輩を呼ぶがよい!!!」
「待って!!名前もまだ…」
「わが名は“空の騎士”ガン・フォール!!!そして相棒のピエール!!!言い忘れたが、我が相棒ピエール。鳥にして“ウマウマの実”の能力者!!」
「!?」
「鳥が…」
ピエールという鳥は、翼を広げる。
そのシルエットはまるで…。
「うそ…!!素敵…!!!ペガサス!!?」
「そう!!!ペガサス!!!」
(((いやァ、微妙…)))
顔が顔、色が色の所為か…。
とてもペガサスという神秘的なイメージとはかけ離れたペガサスになった。
「勇者達に幸運あれ!!!」
そう言い残すと、空の騎士は微妙なペガサスに乗って飛び去った。
「オカシな生き物になったぞ、アレ」
『ペガサスって全部あんなんなのかな……。…初めて見たよ』
「いや、違ェだろ」
「……結局何も教えてくれなかったわ」
「……そうだ…ホント……何も」
そして、また何も分からない状況になった。
「そう言えば、ノキ…だっけか。お前、情報屋なんだろ?知らないのか?」
サンジがノキに聞いた。
ノキはかぶりを振る。
『空島についてはおれもよく分からない』
「おいおい…」
『情報屋だって、全部を知ってるわけじゃないんだ』
「じゃあ、全てを知ってるっつうのは?」
単なる噂、と言った。
『あれは誰かが勝手にそう言い始めただけだよ。おれは頼まれた事を調べて、それを提供するだけなんだから』
「じゃあ、空島に来ようと思わなかったのか?」
『全然。来たって何もないだろうし…』
(あれ以来…空に用はなかったからなァ…)
と、ノキは頭を掻いた。