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□3.俺達の選ぶ道。
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「―――亮。本当に良かったのか?」
森の中を進みながら、佐伯は帽子を深く被った亮に言った。
すぐ近くで佐伯と同じく亮を捜していた黒羽も合流している。
亮は帽子のつばをまた少し下げると、短く答えた。
「良いんだよ」
「けど、何度も言うがこれは強制じゃない。亮が淳と行っても誰も責めたりしない」
「…サエは、俺が淳と行っていなくなれば良いと思ってんの?」
「違う、そうじゃない!」
亮は力一杯否定する佐伯に少し笑って、帽子のつばをようやっと少し上げた。
「そういう風に思えてくるから、もうやめよう。…サエが俺達のことを考えて言ってくれてるのは、わかってる。わかってるけど…俺は六角を選んだんだ。淳と一緒に行くことも、淳を連れて行くことも、出来ない」
「…それなんだけどよ」
亮と佐伯の会話から、やっと状況を把握したらしい黒羽が、首を傾げながら口を開いた。
「何で淳は連れて行けないんだ?俺達のことを説明して、その上で淳が一緒に来ることを望むんなら―――」
「何言ってるんだよ、バネ」
黒羽の言葉に一瞬目を丸くしたあと、亮は苦笑した。
「――俺と一緒に来たら、淳が死んじゃうじゃないか」
笑ったその顔は、紛れもなく兄の顔だった。