□汚れた手
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まもなく戦が始まる。
「旦那!今日もちゃっちゃと終わらせようねっ。…旦那?」
「……」
俺は返事のない旦那を不審に思い目をやる。
旦那は手を握ったり開いたりを繰り返しながらそれをただ見つめているだけだった。
「旦那」
「おぉ…どうした?」
「手、動かないの?」
「いや…なんでもない。」
「ちょっと見せ「大丈夫だ!!」
旦那は出陣方向へ向き直り構えた。
「いくぞおおおぉぉぉおおっ!!!!」
「「「おおぉぉ――――」」」
声だけはいつものごとく立派なのねぇ…
俺は旦那の後ろにぴったりとついて戦った。
だって不安だったから。
旦那を失いたくない。
このまま旦那を一人にしたら絶対に斬られる。
実際今だって敵兵のこと殺せてないしね。
今更殺すことに躊躇いが?
「危ないっ!!」
俺は旦那を背後から狙おうとしていた奴を切り裂いた。
こんな気配も感じ取れないの?
「はぁ…はぁ…佐助…すま「いい加減にしろ。」
「な…なんだ…?」
「このままじゃ死ぬよ?」
戦場には戦終了の合図が響きわたる。
俺はそれと同時に旦那の手を強引に引き武田軍本陣へと戻った。