□それでも好きな人
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「俺のhoneyになってくれないか…?」









そう言われてもう半月も経つ。


貴方様への想いは募るばかり。



会えない日々が続くから…







某は今日も貴方様へ向けて文を書いております。












ずっとお慕いしていた貴方に告白をされ…


本当に信じられなくて…




「政宗殿…お会いしたい……」


国の主である政宗殿は多忙…それはよく分かっている。


そして奥州…とても遠いから会えないのは承知の上なのに…





会いたくて会いたくて…











「幸村。」


「な…なんで…」



振り向くと愛しい貴方の姿があった。


これは幻…?





「あまり大きな声を出すなよ?」


そう言いながら抱きしめられた。




「本当に…政宗殿でござるか…?」


「嘘だと思うか?」




だって…ここは上田城の私室で…




政宗殿がくるなんて…





「冷たいでござる…」


「馬に乗って走ってきたからな。」


「何か着るもの…」






「いいよ。お前はbabyみたいに暖かいから。」





「はい…」



某は寝間着一枚の薄い布を纏っているだけだった。



それが妙に恥ずかしくて…

心臓の音が知られてしまう…







「もっと近づけよ…」


「しかし…某……」














「幸村様ー!!」





少し離れたところから部下の声が聞こえた。



「政宗殿、早くお隠れください!!」



見つかってしまったら騒ぎになる…




なのに政宗殿は余裕の笑みを浮かべて、さらに強く抱きしめてきた。






「幸村…俺には時間がない。」


「時間…?」






苦しいくらいに抱きしめられて、きっといくらもがいても抜け出せない。




「政宗…殿……?」






このとき…



初めて気付いた。













「なっ…なに……?」



背中からの激痛。


金属が体の中に入ってくる感覚。









「幸村様!!お館様がっ………幸村様!?…独眼竜……」





部下が部屋に入ってきて某の姿を見て絶句しているようだった。





「悪いな。もう二人とも片づけて……後はこいつだけだ。」




二人…?





お館様と…佐助……?





「後はって言ってもすでに虫の息だけどな。」





政宗殿が某の身体を離すとすぐに倒れ込んでしまった…








寝間着や畳は自分の血で染まっていて…



気付いたときには部下も同じように倒れていた。








愛しい人…


ずっと思いを寄せていた人…





政宗殿に…
















裏切られた…?






「政宗様。こちらもほとんど終わりました。」


「Thank you 小十郎。行くぞ。」


「はい。」







薄れていく意識



霞んだ視界には…






まだ…貴方の姿が……





さっき抱きしめられた温もりだってまだ残っているのに……









部屋を出る貴方は最後にこちらを振り返った。
















「天下を取るのは俺だ…真田幸村。」





裏切られた…



それでも好きな人。







そして静かに目を閉じた…

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