□拍手文・好きな人は主のもの…
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初めから諦めている恋。




きっと育つことのない俺の恋…












「具合でも悪いでござるか?」


「いや!!そうゆうわけでは…」






戦よりも緊張する…






「静かでござるな…」


「いやいや!!いつもうるさく怒鳴ってばかりですよ!!政宗様はいつまでたっても子供のようで…」




あなたの前だから俺は今こんなに格好悪い。









「そうだぜ幸村。毎日俺のこと怒鳴り散らしてよー。」




この人は敬愛なる主。



そして






「政宗殿!!」




あなたの恋人。























政宗様の我が儘には困ったものだ…



「おい、小十郎。」


「何ですか?」


「同盟が結びたい。」








で、結局俺一人が上田城に来た。


政宗様は忙しいとかで来ず、普通はいるであろう護衛も付かず……





いや。


正確には護衛をつけなかった。




自分でも情けないと思う。


誰にも邪魔されたくないからだなんて。








「うおおおぉぉぉおおおおおーーーー!!!!」


「っ!?」





馬に乗っている高さからよく見える。


真田幸村は稽古をしていた。



「ぅおやかたさばぁぁぁぁああああああああああ!!」



うるさい…

いつもにも増して暑苦しい…






しかしこいつの戦ってる姿は見事としか言いようがないくらいに勢いがある。



政宗様と対等に戦えるほどに…






「誰だっ!!!」


気付けば槍が俺を指していた。





でもすぐに槍を下げて顔をまじまじと見てきた。




「…」


「…」


「えっと……」


「…」


















「片倉小十郎…?」



俺の名前を…?


ほんの少しの何気なく当たり前のこと。



嬉しかった。


ずっと見てた。


遠くから…






俺は…



此奴のこと…





「貴様!!何をしに来たっ!!」


「どっ…同盟をっ!!」


「同盟…でござるか?」




そんな…なんで唐突に言ってしまったんだ…





「同盟というのは…本人が来るものでは?」


「政宗様はとても忙しいお方だ。」


「はぁ…それで一人で?」


「そうだ。」






思いっきり怪しまれている…



でも真剣な顔してれば平気だろう。






「怖…とりあえず某では対応できませぬ。お館様に聞かなければ…」


「取り次いでもらえるか?」


「もう少し待っていてくだされ。」


「あぁ。」












「あっ…」


「?」


「今稽古が終わったところでござる。一緒にお茶でも…」






お茶?




真田幸村と…?



俺が?









「これは…奥州のまんじゅう!!」


「食べろ。」


「片倉殿は優しいでござる!!」




変な感じだ…


こんなに近くで話しているなんて…





まんじゅう一つでこの喜びよう…


まだガキだな。






「片倉殿もどんどん飲んでくだされ!」



戦との違いが俺をこうもかき立てるのか…







いつか政宗様も知ってしまう。



この違いに気づき…


そしてさらに…








「ちょっ!!!!」


「佐助〜♪」


「アンタ…なにやってんのよっ!!」




武田の忍…か。






「旦那!!此奴はねっ」


「知っているでござるよ。」


「アンタ殺されても知らないよ!?」


「は?」


「まんじゅうに毒入ってたらどうすんの!?」








まぁ…普通は警戒するだろう。













「片倉殿はそんな方ではないでござるよ?」




何の根拠があってそう言えるのか。


俺は呆れて言葉も出なかった。



もちろん唖然とした。





此奴は生粋の馬鹿なんだって。


















「まんじゅうでございます。」


「これは…」




あなたは覚えていますか?






「片倉殿と初めて一緒に食べたまんじゅうでござる!!」


「覚えていたのですね…」








今のあなたは政宗様のもの。



近くなったようでとても遠い存在…





もう…


目上の存在なのです……







「また一緒に上田城の縁側に座ってまんじゅうを食べたいでござるな!!」





あの時の二人に戻れたなら…










「そうですね…」



こんな堅苦しい敬語にも縛られず…


自分の気持ちを…








「約束でござる!!」





打ち明けられたのなら、今の俺はどう存在していたのだろう…








「幸村!!行くぞ。」


「あっ、はい!!」




そしてまた俺は昔に戻る。






「それではまた、片倉殿。」











戦であなたを見つけたときのように

ただずっと見守るだけの日々に…

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