SEED SHORT

□過去拍手2本
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「…お腹痛い…熱い…てか辛い…」
「思いっきり風邪だね。まあ季節の変わり目だししょうがないよ」


世間は土曜日で、青空は折角晴れ渡っているというのに私は布団の中だ。
隣には、いいと言ったのにわざわざ来てくれた最愛の彼氏キラ・ヤマトがいる。


「…せっかくの土曜日なのに」


キラに聞かせようとしたわけでもなく愚痴をこぼす。思えば自分はいつも、遠足とか文化祭とかそういう大事な時に限って風邪を引いていたような気がする。それも決まって高熱の。
タイミングの悪い女…更には其処まで体が弱いわけではないので2日で復帰できる。良いことのように聞こえるかもしれないが、つまりは1日では流石に治らないということ。治るのに2日もかかるのだ、きっと今回の風邪も。
高熱のせいで思考はぐるぐると意味のわからない回転を繰り返しているが、自分の力では止められないらしい。そんな私を見かねてキラが声をかけてくれる。


「ほら、嘆いたってしょうがないでしょ。欲しいものとかある?なんか買ってこようか?」
「…だっ、て」


折角キラが機転を利かせて話題転換をはかってくれたのに、それを私は押し戻す。酷い自己嫌悪に浸って、自業自得な私は更に気持ちが沈んだのに、気にもせず耳を傾けてくれる優しいキラを見つめた。


「だって…、先週は…試験前、だったから勉強で…、メールだって…あんまりできなかっ、た…から」


うわ言のように呟かれるそれは最早私の管理下にはいなかった。いよいよ熱のせいで涙まで出てくる。ひどく自分がみじめだ。


「きょう…楽しみにしてたのに…」


零れるのは本音と水分で、状況も言い方もちっとも望んだそれではない。期待した分だけロマンチックになるはずだった休日は、体中が痛むちっぽけな芋虫状態なのだ。伝う涙に、不意に温かい指が触れて、一度閉じた瞼を開ける。


「だから来たんじゃない。今日は1日、ずっと傍に居られる」


キラはちっとも嫌な顔をしないで、私の涙をぬぐった手で頭を撫でてくれた。思わず布団の中で、今度こそ待ち望んでいた笑顔を零す。
紫の瞳は変わらず優しくて、紡ぐ言葉は柔らかくて、いつだって私の頬から涙を消してしまうのだ。


「うつっちゃうよ?」
「君が楽になるなら、貰いたいくらいだよ。そろそろ学校休みたかったし」
「ばか」



















(元気な時も、病気の時も、貴方が傍に居れば)








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暖かかったり寒かったり雪だったりと、気温の変化が激しいですが、皆さんも体調にはお気を付けくださいませ!拍手ありがとうございました。
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