SEED SHORT

□かれとわたしのうさぎさん
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「あれ…なんでここにいるの…」

それが私の発した第一声だった。
本当はもっと気の利いたことや可愛らしいことを言いたかったのだけれども、それはやはり風邪っぴきの私には到底無理な話だっただろう。
とりあえず、やっぱりそれが私が発した第一声なのでした。



[かれとわたしのうさぎさん]


おかしいな、熱さのせいで幻覚でも見てるのではないだろうか。そう思っても不思議はないよね。だってここは私の家で、しかも私は一人暮らしで、よりにもよって今日は風邪を引いて、どうしたものかと思いつつも誰にも助けを求めることもなく寝ていたのであるから。それは別に彼が頼りないとかではなく、うつしたくないなという私なりの配慮と、寝てれば治るという私なりの大ざっぱさからだった。うん、そうなのだけれど。


「…なんでレイがここにいるの…?」


これで幻覚だったら私は相当頭のおかしいひとになってしまう。が、しかし、その幻覚はちゃんと私の質問に答えた。聞き間違えようのない、レイの声で。


「…お見舞いに来ました」


いや、それはそうなんだろうけれど。
あれ、でも私風邪引いたなんて言ってないし、なんで分かったんだろう。
てゆうか第一レイはどうやって家の中に入ったんだろう。
しかしその後半の答えはわりとすぐに行き当たることとなる。私がレイに合い鍵をあげたから。それだけ。
風邪を引くと記憶力も低下するのかと思いながら、来てくれたレイにお茶でもと起き上がろうとすると、「寝ていてください」と制止されてしまった。そりゃあそうよね、私病人だし。
言われたとおり布団に戻ると、レイはきょろきょろと辺りを見回す(今多分レイの可愛さに熱が上がった)、さらさらした長い髪が一点で止まり、レイは台所の方に向かっていった。

そういえば朝から何も食べていない。でもあんまり食べる気もしない。
そんな私の気持ちを測ったように、出てきた物はうさぎさんだった。
…いや、うさぎ型のりんごでした。

お粥嫌いの私にとっても、果物好きな私にとっても嬉しいことです。さっすがレイは私のことをよく分かってる!
揚々としながらレイを見つめると、不思議そうな瞳に行き当たる。…可愛い…っ!


「…食べないんですか?」
「…食べさせてくれないの?」


レイより可愛く言った自信は無かったけど、レイはちゃんと私の口元にうさぎさんを連れてきてくれた。




私は今日、久しぶりにレイと、ずっと一緒にいることが出来ました。
今度は、私が風邪を引いた可愛いレイの看病をしてあげようと思います。


うさぎさんを作って。

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