SEED SHORT

□過去拍手2本
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寝苦しい夜というのは、前兆もなくやってくるのだから厄介だ。

夏の熱帯夜が原因な訳でもなく、冬の冷え切った体が原因な訳でもなく、息苦しくて何故か眠れない時、寝返りを幾度となくうちながら私は酷く不安な気持ちになる。何が不安だとか、具体的なことは何一つ浮かばないのに、何処かリアルな心の鉛が確かな重さを持って私を押しつぶしそうになるから。深呼吸という気持ちを落ち着かせる行為すら何の役にも立たないこの状況。つまりは───八方塞がり。

「…最近、不規則な生活してたからかな」

独り言のようにぽつりと呟いてみたけれど、その声は私の胸の重圧を軽くはしてくれなかった。なんとなく思ったことがまさか原因にヒットしている筈もなく、私はただ肺に深く空気を送り込むくらいのことしか出来ないのだ。

「ばーか…」

今度は意味のわからない自己罵倒を口から吐き出して気持ちを楽にしてみようとはかってみた。随分と陳腐で稚拙な言葉は、本来なら返ってくるものも在るはずがないのに、何故だかこの時は、無性に聴きたかった声で私の耳に響いてきたのだ。

「それって、こんな深夜に彼女の家に不法侵入した僕に向けての言葉?」
「…!、えっ!?き、」

それとも、眠れないで不安に取り付かれてた君を放って置くしか出来なかった僕の自己嫌悪が伝わって君の口から出ちゃったのかな、なんて、彼はそんなことを言いながら私が体を起こしたベッドの方へと歩を進めてくる。廊下のライトが逆光となっているせいで表情は全く見えないのに、私は不安になることもなく、ひんやりとした彼の手が頬に添えられるのを受け入れた。

「合い鍵、あるんだから…不法侵入じゃ、ないでしょう…?」

その感触が心地好くて、体に浸らせて味わうように私は目を閉じる。彼の体温も、声のトーンも、雰囲気も、待ち望んでいた安寧をただ静かに私に与えてくれるから微睡んで、途切れ途切れに言の葉を結んだ。

じゃあ後者の方かな、なんて言うキラに、私は来てくれてありがとう、と答えになっていない言葉を返して。
絡み付くようにキラに腕をのばして、その体を布団の中へと招き入れた。抱き寄せて貰ったことで触れたキラの心音に落ち着いて、私は漸くぬるま湯に浸かるようなあたたかい眠りにつけるのだ。


「キラ、」


(…だいすき、って、あさになったら…とびっきりおいしい、ごはんといっしょに、つたえるから)
(いまだけは、どうか…はなさないでいてね)


夢の途中で、君に伝える。











***

これからの季節は暑くて眠れなくなりそうですね…。皆さん体調にはお気をつけて><
2個目のSSはキラ視点でギャグちっくです 笑



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